研究課題/領域番号 |
21KK0160
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
仲野 和彦 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (00379083)
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研究分担者 |
野村 良太 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (90437385)
大川 玲奈 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (80437384)
又吉 紗綾 大阪大学, 歯学研究科, 特任助教(常勤) (70910214)
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30359848)
仲 周平 岡山大学, 大学病院, 講師 (10589774)
吉田 翔 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (40801048)
後藤 花奈 岡山大学, 大学病院, 助教 (90846495)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 重度う蝕 / Streptococcus mutans / コラーゲン結合タンパク / 全身疾患 / 低中所得国 / タイ |
研究実績の概要 |
う蝕原性細菌 Streptococcus mutansは、感染性心内膜炎の起炎菌としても知られている。近年、S. mutansには菌体表層にコラーゲン結合タンパクであるCnmを発現している株が存在し、感染性心内膜炎だけでなく脳血管疾患、腎疾患、非アルコール性脂肪肝炎などの全身疾患にも関与することが明らかになってきている。そこで、Cnm陽性S. mutansの保菌者の分布を詳細に分析することが、ある種の全身疾患の低減に役立つ可能性があるのではないかと考えた。本研究では、日本の各地域において口腔サンプルを採取してCnm陽性S. mutansの分布に関する調査を行うことにした。 研究を行うに当たり、歯学部が存在する全国の国立大学に共同研究への参画を依頼したところ、10大学においてご協力いただけることになった。これらのうち、北海道大学、大阪大学、岡山大学、広島大学の4つの歯学部附属病院において患者の同意のもとで口腔サンプルの採取を開始し、現在までに143名の患者の口腔サンプルからS. mutansを分離した。これらの患者について、1名につき5株のS. mutansをピックアップしてゲノムDNAを抽出し、PCR法によりCnmをコードする遺伝子の検出を行った。その結果、Cnm陽性S. mutansの保菌者は143名のうち16名(11.2%)であり、各施設におけるCnm陽性S. mutansの検出率は北海道大学で25.0%(12名中3名)、大阪大学で9.1%(33名中3名)岡山大学で12.5%(32名中4名)広島大学で9.1%(66名中6名)であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
すでに分析が進んでいる4つの国立大学に加え、新潟大学、徳島大学、九州大学においても口腔サンプルの採取を開始して分析を進めている。本研究では、Cnm陽性S. mutansの分布に関して、日本国内で得られた結果とタイをはじめとする低中所得国で得られた結果を詳細に比較検討する予定である。現在までに、海外の共同研究者とは定期的なメール会議を行って研究の方針に関するディスカッションを行ってきている。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大のため、海外でも臨床研究に関する倫理審査を進めているが進行は遅れている。また、分離したS. mutansを用いた基礎研究を進めていくに当たり、研究代表者が海外で必要な物品の発注は済ませているものの、納品が遅れており予算の執行も滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
日本の各大学との共同研究を継続し、各地域におけるCnm陽性S. mutansの分布の詳細を明らかにする。また、海外の共同研究者と緊密な連携を取り、共同研究ができる限り迅速に進められるよう努める。国内外の被験者からは口腔サンプルの採取だけでなく全身的既往歴や生活習慣などの疫学データも採取することになっており、これらの情報とCnm陽性S. mutansの有無との関連性を明らかにする。さらに、分離したCnm陽性S. mutansを用いて、コラーゲン結合能の測定など全身での病原性に関わる分析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、海外での臨床研究を行うための倫理審査や被験者の確保が難航している。また、口腔サンプルからS. mutansを分離して病原性の分析を行うために必要な物品の納品が遅れており、予算の執行が予定よりも遅れている。今後は、海外の共同研究者との活発なメール会議およびWeb会議を企画して、進行を早めるための効率的な方法を検討する。また、日本国内での研究はおおむね予定通り進んでいることから、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きしだい、国内の研究者をできる限り海外へと派遣して現地でのサンプル採取や疫学調査の指導およびアシストを行い、研究の遅れを取り戻す予定としている。
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