研究課題
本研究では、バングラデシュのヒ素汚染地域の住民を対象に、筋肉量、脂肪量、内臓脂肪量などを実測する。初年度は、その計測に必要なポータブル型の体組成計(タニタ・MC-780A)、および脚力を評価する装置(タニタ・ザリッツ)を日本で購入し、基本操作、データの記録方法などを確認した。予定では、バングラデシュの共同研究者であるHossain教授が米国の共同研究者であるピッツバーグ大学のBarchowsky教授の研究室に滞在している期間(2021年9月~2022年2月)に、姫野もピッツバーグ大学を訪問し、3者での研究打合せを行うはずであった。しかし、新型コロナ・オミクロン株の蔓延によって渡米と帰国後の行動が著しく制限されたため、オンライン会議に切り替え、様々な打ち合わせを行った。(姫野)筋肉由来の細胞をヒ素に曝露した際、senescence-associated secretory phenotype (SASP) と呼ばれる分泌現象に関わる炎症性サイトカイン等が増加するかを検討するための準備を行った。サルコペニアのモデルとなる老化促進マウスをヒ素に長期曝露するための準備を行った。(岡村和幸)細胞レベルで筋肉へのグルコース取込み効率を評価するため、マウス筋芽細胞であるC2C12細胞を用いて基礎条件の検討を行った。ウマ血清で3日間培養して筋肉細胞へ分化誘導したC2C12細胞にインスリンを添加すると、グルコースの取り込みが亢進することを確認した。(角 大悟)ヒ素による細胞死に酸化ストレスによるフェロトーシスが一部関与することを明らかにした。酸化ストレスを介した細胞死に関わることが報告されている細胞のリン脂質組成を変化させるために、アシルCoA合成酵素の発現レベルを抑える系の構築を行なった。(原俊太郎)
2: おおむね順調に進展している
2021年度中に姫野が米国訪問する予定であったが、新型コロナ・オミクロン株の蔓延によって来年度に延期した。しかし、バングラデシュのHossain教授、米国ピッツバーグ大学のBarchowsky教授とは複数回のオンラインでの研究打合せを行うことができ、2022年度に調査研究を行うための準備は順調に進んだ。また、バングラデシュでの使用を予定している体組成計を日本で購入し、基本操作、記録の作成についての検討を行うことができた。細胞、動物レベルでヒ素曝露が筋肉や脂質の代謝、老化促進におよぼす影響を検討するための実験系について準備を進め、条件検討を開始した。
バングラデシュに体組成計、および脚力計を持ち込み、まずRajshahi大学のHossain研究室の研究員、学生とともに、大学から比較的近郊にある調査地で、予備的な測定を行い、実際の調査地で起こる問題などをチェックする。被験者に体組成の情報をフィードバックするための書式などを作成し、調査地での予備検討で修正する。姫野の渡航時期は乾季となる10月以降を予定しているが、新型コロナの状況によって流動的に対応する。米国のBarchowsky教授との打合せは、主にメールやオンライン会議で行う。なお、2023年3月に米国毒性学会にBarchowsky、Hossain、姫野の3者が参加する可能性があり、その場合には米国毒性学会の会場、およびピッツバーグ大学において3者での打合せを行う(姫野)筋肉由来の線維芽細胞等を用いて、ヒ素曝露による細胞老化マーカーの発現、SASP因子の産生を調べる。ピッツバーグ大学のBarchowsky教授の研究室を訪問し、米国での共同実験のための打合せを行うとともに、2023年度の長期滞在に向けた準備と米国での予備的な実験条件の検討を開始する。老化促進マウスを用いた実験は国内で続行する(岡村和幸)筋肉に分化誘導したC2C12細胞でのグルコースの取り込みに対するヒ素曝露の影響を、様々な曝露濃度、曝露期間で検討する。妊娠マウス、および出生仔をヒ素に長期曝露し、筋肉量、筋肉機能、インスリン感受性への影響を調べる(角 大悟)血管内皮細胞等の培養細胞をヒ素に曝露し、リン脂質組成や脂質性メディエーター産生の変化についてLC-MS/MSを用いて解析する。アシルCoA合成酵素等脂質代謝酵素のノックダウンが、ヒ素感受性に及ぼす影響についても解析する。(原俊太郎)
当初、姫野が米国出張する予定であったが、新型コロナの蔓延状況により、次年度に延期したため、旅費を使用しなかった。2022年度に米国出張する予定なので、その時に旅費を使用する予定である。
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