研究課題/領域番号 |
21KK0175
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
川上 泰雄 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (60234027)
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研究分担者 |
平井 宗一 日本大学, 医学部, 教授 (70516054)
若原 卓 同志社大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (20508288)
塩谷 彦人 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助教 (60907153)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | muscle injury / humans / hamstrings / biceps femoris / muscle architecture |
研究実績の概要 |
スポーツ活動における外傷(肉離れ)の好発部位であるハムストリングスのうち、特に肉離れが頻発する大腿二頭筋について、損傷が生じやすい理由としてその筋形状の特殊性を想定した。国内の複数大学でチームを構成し、研究期間を通じて国際的な共同研究組織を構築し、各拠点に出張して研究活動を行う当初の計画のうち、2022年度は、大腿二頭筋長頭の三次元的な筋束・腱組織形状を、人間生体および解剖体の観察を通して明らかにすることを目的として研究を進めた。依然コロナ禍は続いていたものの、可能な限り感染症対策を講じた上で、研究代表者と研究協力者がスペイン・イギリス・オランダへ出張を行う機会を得ることができ、現地の研究協力者との打合せ、日本での取得データについての討議、2023年度以降における本格的な海外でのデータ取得についての計画策定を行った。また、2021年度の研究成果を国際会議において発表・討議する機会も得られた。 2022年度の研究成果として特筆されるものとして、大腿二頭筋長頭の複雑な筋束形状が、それらが付着する腱膜の「ねじれ」構造によるものであることが明らかになった点をあげることができる。また、国内の研究協力者との共同研究による人間の解剖体の腱膜のマクロ・ミクロ解剖を通じて、大腿二頭筋の腱膜が、実際には単純な「膜」構造を取っていないことも明らかになった。これらの成果は査読後に国際会議において発表演題として採択され、2023年度中に発表・学術論文投稿の予定である。また、大腿二頭筋の肉離れが頻発するランニング動作に関して、シューズの影響や足底部の軟組織の変化、身体セグメントの慣性特性の個人差について、また、骨格筋の3次元筋束形状の計測手法の開発について、論文出版や学会発表を行った。さらに、コロナ禍での本研究活動の制限に関する経験と今後の課題について、一般者会に向けて積極的に発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、新型コロナウイルスのパンデミックが依然終息を見せない中で、研究協力者達の異動や入国の遅れ、研究代表者・協力者の海外出張の断念等で、研究の大幅な遅れが生じる結果となったが、2022年度はそうした点が概ね改善に向かい、2021年度当初に予定していた研究をようやく進めることができた。特に、博士後期課程に所属し、研究協力者として本研究を中心的に担うことになっている学生がようやく居住していたスペインより入国を認められ、本格的なデータ取得を開始できたことが大きかった。国内外の出張が行えるようになったため、共同研究も本格化し、多くの成果を上げることができた。 結果的にほぼ1年遅れとなった研究計画であるが、2022年度の研究成果の蓄積は当初の予想を大幅に上回るものであることから、これまでの成果をふまえて「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度については、国際会議において上述の研究発表を行い、その議論をもとに学術誌に研究論文を投稿しつつ、2022年度に蓄積することができた手法を応用しながら、さらに研究を深化させる。秋には研究代表者と研究協力者が比較的長期オランダの研究協力者のもとに出張する予定であり、人間の解剖体を対象とした実験を行うことを計画している。また、幸いなことに、2023年度の夏に日本においてバイオメカニクスに関する国際会議が開催される予定であり、本研究の研究協力者の多くと対面で討議を行う機会に恵まれる。この機会を最大限に活用しつつ、研究をますます加速させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響が少なくなったとはいえ、特に海外出張に制限が存在する中、2021年度に一切海外出張ができず、繰り越しが生じた状態を引きずった状態で2022年度の予定を下回った使用額が若干次年度に繰り越されることとなった。
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