研究課題/領域番号 |
21KK0182
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
野中 哲士 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (20520133)
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研究分担者 |
中嶋 浩平 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (10740251)
永野 光 神戸大学, 工学研究科, 助教 (70758127)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | goal-directed system / agency / dexterity / 柔軟性 / 探索 / 環境 / reservoir computing / アフォーダンス |
研究実績の概要 |
自律的システムが,なんらかの好ましい環境との関係をロバストに形成するかたちで,融通無碍に多自由度からなる組織や運動協調パターンを変化させる性質は「柔軟性(flexibility)」と呼ばれ,その理解は,心理学や認知科学はもとより,ロボットや人工知能など複数の研究領域においてブレークスルーを要する極めて重要な研究課題となっている.本研究プロジェクトは,多様な環境に際して,知覚すべき対象や形成すべき環境との関係に応じて,課題特定的なかたちで「探索する手」の動作パターンが柔軟かつリアルタイムで創発する原理を根本的に解明することを目的とするものである.この目的に向けて,本プロジェクトでは,身体性認知科学,レザバー計算,ロボティクス,ハプティクス工学とそれぞれ異なる研究領域を専門とする研究者たちが有機的に連携し,学際的・国際的な共同研究を行う.初年度の6ヵ月のあいだには,コロナ禍の影響もあり海外共同研究機関に直接出向くことはかなわなかったが,プロジェクトに参加している国内外の研究者が毎月オンラインでディスカッションを行うミーティングを行い,具体的な連携の進め方の丁寧な熟議を重ねた.現在,遠隔での連携による下記のプロジェクトが進行中である.(1)事物・出来事を特定するエネルギ-配列が生じ得る情報メディウムの性質から,課題特定的探索動作組織の創発に必要な条件を同定する理論研究,(2)課題特定的な探索動作の動作解析(点字の触読,身体図式の知覚)による検討,(3)複雑な熟練技能における,状況の変化に応じた動作協調パターンのシミュレーションによる検討.2022年度には,研究代表者が海外共同研究機関に直接出向き,さらなる研究の進展を図る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の6ヵ月のあいだには,コロナ禍の影響もあって,英国の海外共同研究機関に直接出向くことはできなかった.まったくの異分野の組みあわせからなる共同研究であることから,初年度は,有機的な連携の可能性を模索するところから始まったが,毎月オンラインのミーティングでディスカッションを進める中で,具体的な共同研究が複数走り出しており,有機的な連携から徐々に成果が生まれつつある.次年度は,海外共同研究機関に国内の研究者が滞在し,共同研究を進める.在外研究がスムースに始められるように,着々と予備実験などの準備が進められており,本プロジェクトはおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の前半には,主に次の研究を行う計画である.(1)環境および身体を情報メディウムとしてとらえ,事物・出来事を映し出すエネルギ-配列が生じ得る情報メディウムの側から,課題特定的探索動作組織の創発に必要な条件を同定する論文を投稿する.(2)現在進行中の課題特定的な探索動作(点字の触読,身体図式の知覚)の実験,分析を行い,結果の一部を論文として公刊する.2022年の9月頭から12月末にかけて,研究代表者が英国の海外共同研究機関(ケンブリッジ大学)に直接出向き,研究滞在を行う.海外共同研究機関においては,探索動作の創発をめぐるロボットを用いた実験,また,楽器を演奏する熟練技能における動作組織の柔軟性に関する実験を行う.さらに,2023年の1月以降は,海外共同研究機関で得られた実験データの分析および論文執筆に注力する.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は,コロナ禍の影響のため,海外共同研究機関に研究代表者および研究分担者が出向くことができず,次年度使用額が生じた.翌年度は,研究代表者が直接海外共同研究機関(University of Cambridge)に出向いて長期研究滞在する予定であり,翌年度分として請求した助成金とあわせて,海外共同研究機関における在外研究のために使用する計画である.
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