研究課題/領域番号 |
21KK0186
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
大塚 俊之 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (90272351)
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研究分担者 |
金城 和俊 琉球大学, 農学部, 准教授 (30582035)
木田 森丸 神戸大学, 農学研究科, 助教 (70903730)
飯村 康夫 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (80599093)
友常 満利 玉川大学, 農学部, 助教 (90765124)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | マングローブ / 炭素循環 / 土壌有機炭素 / クロノシーケンス / タイ王国 |
研究実績の概要 |
地球上で最もCarbon-richな生態系であるマングローブ林は、同時に最も脆弱な生態系でもあり、その保全は地球温暖化緩和のための重要な戦略である。タイ王国では、エビ養殖のために多くのマングローブ林が破壊されてきたが、近年になって、生産性の低下に伴って古い養殖池の放 棄が見られるようになり、マングローブ林植林が進められている。このような荒廃地での生態系炭素貯留量の回復は、その保全と同等の温暖化緩和のための低コストオプションになり得るが、まだ研究例は少ない。本研究の目的は、タイ王国でのマングローブ植林が、生態系炭素貯留量(特に土壌有機炭素)の蓄積に与える効果を評価して、蓄積した有機物の起源を明らかにする事でてある。また、日本とタイの若手研究者の交流を通して、マングローブ林の土壌有機炭素動態についての国際的な研究の活性化を目指す。本年度は、海外での調査許可申請と、許可を取得後に実際の植林地での測量や土壌サンプリングのための調査を3月の乾季に予定していた。しかしタイへの入国がCovid-19の影響で難しく、許可証の取得が不可能となり、これらの仕事は次年度に延期にせざるを得なかった。したがって、本年度は、カウンターパートであるチュラロンコン大学のSasitorn准教授と、メールやZOOMなどで許可申請のための申請書のやりとり、および実際の現地調査のための打ち合わせなどを行なった。また、土壌の比重分画による細根分離のための予備的な実験などを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
タイ王国での科学研究のためには、NRCT(National Research Council of Thailand)での許可申請がまず必要である。タイでの研究許可申請では、最終的なNRCTへの報告書の未提出を防ぐために現金での depositの必要があり、研究を開始する前に少なくとも申請代表者は事前に一度はタイに入国する必要がある。しかしCovid-19の影響で本年度はタイへの入国が難しく、正式な許可申請を行うことができなかった。そのため、乾季(2月か3月)に予定していた、現地調査も行うことができなかった。このように本年度は予定していたサンプルの採取などが出来ず、研究の進捗に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の調査地である、バンコク近郊のSamut Prakash県にあるBangpu Natural Education Centerは、40年ほど前に放棄されたエビ養殖地を整備したものである。このエリアでは2004年からマングローブ植林が行われており、現在では様々な林齢の植林地が海岸沿いに存在する。このマングローブ植林地のクロノシーケンスを用いて、植林が生態系炭素貯留量の蓄積(特に土壌有機炭素の蓄積)に与える効果を評価して、その起源解析から蓄積のプロセスを明らかにする。タイ入国については2022年5月1日付けで、入国許可申請のための「Thailand pass システム」の運用方針の簡素化が発表された。基本的な内容は事前申請において、ワクチン接種証明書と、新型コロナの治療費等を含む医療保険証が提示されれば、タイ渡航前および入国後のPCR検査、および健康観察期間(隔離)措置が免除されることになり、入国が容易となった。このため、NRCT での許可申請を取り付けるために、代表申請者である大塚がまず8月にタイに渡航し、カウンターパートであるチュラロンコン大学のSasitorn准教授と作成した研究計画を提出すると共に、メンバー全員のPermission cardを取得する。また可能であれば、許可申請時にメンバーも参加して、現地でのエクスカーションとSasitorn准教授と具体的な調査に向けた打ち合わせを行う。その後、タイの乾季である3月に、現地での最初の野外調査を行う予定である。この調査では、様々な林齢の植林地でピートサンプラーを用いて深さ3 m まで土壌コアサンプリングを行う。バルク土壌のコアは、50 cm 深さごとに切り分けて、一部の試料を仮比重測定用に分取する。さらに残りの試料は比重分画や炭素濃度の測定のために日本に持ち帰る。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響で本年度はタイへの入国が難しくなった。本年度は許可申請と、現地調査のために2回の渡航を予定していたが、いずれも中止となり、これらの計画が来年度に持ち越しになったため次年度使用額が生じた。来年度は本年度分を含めた渡航により、許可申請と調査を行う予定である。
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