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2023 年度 実施状況報告書

荒廃地へのマングローブの植林は生態系炭素貯留量をどのくらい増大させるか

研究課題

研究課題/領域番号 21KK0186
研究機関岐阜大学

研究代表者

大塚 俊之  岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (90272351)

研究分担者 金城 和俊  琉球大学, 農学部, 准教授 (30582035)
木田 森丸  神戸大学, 農学研究科, 助教 (70903730)
飯村 康夫  滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (80599093)
友常 満利  玉川大学, 農学部, 准教授 (90765124)
藤嶽 暢英  神戸大学, 農学研究科, 教授 (50243332)
研究期間 (年度) 2021-10-07 – 2026-03-31
キーワードマングローブ / 炭素循環 / 土壌有機炭素 / クロノシーケンス / タイ王国 / 細根バイオマス / 比重分画
研究実績の概要

本研究ではタイ王国のチャオプラヤー川河口に位置するBangpu公園におけるマングローブ植林地を対象として、植林が生態系炭素貯留量に与える影響をクロノシーケンスの手法から明らかにするとともに、特に土壌有機炭素の蓄積のプロセスとその起源を明らかにすることを目的としている。2023年2月に林齢の異なる4カ所(10, 12, 14, 18年)の植林地で、土壌を3 m深度までサンプリング(4反復)した。また細根バイオマスの測定のために1m深度までの土壌をサンプリング(6反復)して、細根を仕分けした。18年生のサイトには植林前からのマングローブ成木個体が残っていたので、10年生から14年生の4年間で比較すると木部バイオマスは40%増加する事がわかった。また1 m深度までの細根バイオマスは、14年生のサイトでは有意な増加が見られ、特に深度別にみると表層では有意差がないが15-30 cmと30-50 cmの深度で細根が増加する事がわかった。土壌については1 m深度までの処理が終了しているが、バルク土壌で比較すると10年生から14年生の4年間で炭素ストックは1.3倍に増加した。また0 - 50 cmでの増加量に比べて、50 - 100 cmでの増加量が大きくなった。また、さらに土壌の機能性成分としてhigh-density fraction (HF), free low-density fraction (f-LF), mineral-associated LF (m-LF)に比重分画を行った。どの成分も林齢が古くなると表層よりも深部で増加して、特に易分解性画分(m-LF)の増加が明瞭であった。さらに、深いところでの細根バイオマスの増加が見られることからも、植物残渣(特に細根リター)の土壌への安定的な取り込みが短期間で進行している事が確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年夏頃までは新型コロナウィルス感染症の影響がまだ継続しており、タイ王国でのサンプリングが難しい状況にあったために、土壌の分析や解析手法について国内のマングローブ林での検討を進めており、やや進捗が遅れていた状況にあった。しかし、実績の概要にあるように2023年の2月に、現地での土壌と細根の集中的なサンプリングを行う事が出来た。現在はこれらの試料を日本で解析を行っているところである。その結果、マングローブ植林地のバイオマス(細根バイオマスと木部バイオマス)の時間的変化については、解析を終えて、計画通り論文を投稿中である。また土壌についても1 m深度までの処理を終えており、土壌炭素貯留量についての投稿論文を準備中である。現場での細根生産と分解についての研究は、コロナウィルス感染症の影響だけでなく、技術的な問題から石垣島のマングローブ林での検討を行ってきたが、タイ王国での測定を2023年3月から開始した。このように現状では、ほぼ計画通りに研究が進捗している。

今後の研究の推進方策

植物バイオマスと細根バイオマスの時間的変化については調査が終了し、論文を投稿中である。土壌有機炭素量の推定と、比重分画についても1 m深度まで終了している。さらにバルク土壌と、その比重分画については1 m深度以降の3 m土壌までの処理を継続する。またこれらの比重分画試料を用いて、土壌炭素量の増加のメカニズムを明らかにするために、起源解析を行う。土壌に含まれる有機炭素の起源としてはマングローブ由来、陸上由来、海洋由来に分別し、それぞれのエンドメンバーとして比重分画で得られた細根、近傍河川中のPOC、近傍海水中のPOCを採取した。比重分画後の土壌、及びこれら3つのエンドメンバーについて炭素と窒素の安定同位体比を測定する。これらの結果から各エンドメンバーの土壌画分への相対的寄与を算出するための混合モデルを作成し、土壌有機炭素プール全体の起源を明らかにする。
さらに、土壌有機物の起源としてマングローブの細根リターが重要である事が推測されたため、深度別の細根の回転率の推定と、現在までに測定した細根バイオマスデータから、細根生産量を推定する。細根回転率はEnRoot法による細根画像の連続撮影に基づいて推定する。1 m深度のアクリルチューブを2023年3月に現地に設置し、チュラロンコン大学の共同研究者の協力を得て9月ごろから月に1度程度の撮影を開始する予定である。また細根リターの分解速度の推定のために、2023年3月の乾季に設置したroot bagの回収を行う。半年後の雨季(9月頃)と1年後の乾季(2-3月)に回収して、残存する根の重量減少を測定して、分解速度を推定する。

次年度使用額が生じた理由

2022年度夏まで現地調査ができない影響で、初年度からの予算がやや持ち越される状況にあり、本年度の現地調査を予定の1回から2回に増やす計画である。また本年度は3名のタイの研究者を日本に招聘して、マングローブ研究のための現場での観測技術(細根生産の測定手法や細根サンプリング法など)の交流会を行う予定になっており、日本とタイの学生も参加して日本のマングローブ林で実施する予定であり、このための予算にも一部使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [国際共同研究] チュラロンコン大学(タイ)

    • 国名
      タイ
    • 外国機関名
      チュラロンコン大学
  • [雑誌論文] Functional organic matter components in mangrove soils revealed by density fractionation.2024

    • 著者名/発表者名
      Hamada, K.; Ohtsuka, T.; Fujitake, N.; Miyajima, T.; Yokoyama, Y.; Miyairi, Y.; Kida, M.
    • 雑誌名

      Soil Science and Plant Nutrition

      巻: 70 ページ: 88-99

    • DOI

      10.1080/00380768.2024.2304761

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 亜熱帯マングローブ林におけるEnRootを用いた細根プロファイルの解析2024

    • 著者名/発表者名
      安藤幹人・稲垣大輝・大塚俊之・平社和也・上玉利健一・友常満利
    • 学会等名
      第71回日本生態学会大会
  • [学会発表] 石垣島ガブルマタ川マングローブ林土壌の比重画分別有機物の分析2023

    • 著者名/発表者名
      濵田航太, 大塚俊之, 藤嶽暢英, 木田森丸
    • 学会等名
      2023年度日本土壌肥料学会関西支部講演会
  • [学会発表] マングローブ土壌に対する比重分画法の最適条件の検討2023

    • 著者名/発表者名
      濵田航太, 大塚俊之, 藤嶽暢英, 木田森丸
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2023年度愛媛大会
  • [学会発表] タイ トラート川流域におけるマングローブ林内土壌の植生および深度別の無機物の特徴2023

    • 著者名/発表者名
      金城和俊, 木田森丸, 藤嶽暢英, 大塚俊之
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2023年度愛媛大会

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公開日: 2024-12-25  

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