研究課題/領域番号 |
21KK0187
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中山 智喜 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (40377784)
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研究分担者 |
山本 裕基 関西大学, 経済学部, 准教授 (00757974)
重富 陽介 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (30780358)
松本 健一 東洋大学, 経済学部, 教授 (00534570)
松見 豊 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 名誉教授 (30209605)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | 環境変動 / 環境計測 / 大気汚染 |
研究実績の概要 |
途上国においては、微小粒子状物質「PM2.5」による大気汚染が深刻化しており、大気汚染の低減と社会経済の発展を両立することが極めて重要である。西アフリカに位置するナイジェリアとガーナはともに、2050年には人口が現在の倍近くに増加すると見込まれている一方で、貧困人口は合計1億人に及んでいる。そのため、栄養状態や衛生環境の改善による感染症の低減とともに、屋内外の大気汚染の改善による呼吸器や循環器の疾患の低減が強く望まれる。しかし、屋内外のPM2.5などによる大気汚染の実態については、よくわかっていない。本研究では、ナイジェリアおよびガーナの都市と農村において、小型センサを利用した屋内外のPM2.5などの通年観測を実施するとともに、周辺環境および生活様式の現地調査を行うことで、周囲の環境や生活様式による屋内外の大気汚染状況の違いを明らかにするとともに、PM2.5などの大気汚染物質が健康や社会経済活動に及ぼす影響を推定することを目指している。 2023年度には、ナイジェリアおよびガーナでこれまでに取得した屋内外のPM2.5の多地点観測データを解析し、その時空間変動を明らかにするとともに、曝露量評価に必要な屋内大気汚染の状況を明らかにした。また、PM2.5に加えて、燃焼起源ガスの連続観測を新たに開始した。加えて、各種統計指標データの要因分解分析により、両国における屋内大気汚染に及ぼす因子の長期変動について調べ、家庭数の増加や家庭あたりの消費エネルギーの増加が屋内大気汚染の増加に寄与している一方、ガーナではナイジェリアに比べて、バイオマス燃料からガスなどの低汚染燃料への変換が進んだため、屋内大気汚染の深刻化が緩和されたことが示唆された。さらに、ガーナにおいてアンケート調査を実施し、屋内大気汚染の主要な要因となっている調理燃料の使用状況およびその要因に関する情報を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には、ナイジェリアおよびガーナにおいて、2022年度に小型センサを用いて取得した屋内外における多地点計測データを詳細に解析し、屋内外のPM2.5濃度の時空間変動および周辺環境との関連性を明らかにした。また、ガーナおよびナイジェリアにおける各種統計指標データの要因分解分析により、両国における屋内大気汚染に及ぼす因子の1990~2018年の間の変動について調べ、屋内大気汚染の増加や減少に寄与している要因を明らかにした。さらに、現地の生活環境および生活様式に関する大規模アンケート調査をガーナの800軒の家庭で実施し、屋内大気汚染の緩和につながる調理燃料の使用状況の変化およびその要因に関するデータを取得した。以上のように、本研究は、現時点で概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、ナイジェリアおよびガーナの都市と農村において、PM2.5およびガス成分の連続観測データを継続的に取得するとともに、これまでに取得した屋内外の観測データの詳細な解析を実施し、国際共著論文としてまとめる。また、2022年度に実施したアンケート調査結果を解析に、屋内大気汚染の緩和につながる調理燃料の使用状況およびその要因を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地への渡航計画を一部変更したため、次年度使用額が生じた。次年度に、渡航旅費や現地での作業実施の謝金として使用する計画である。
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