研究課題/領域番号 |
21KK0188
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
玉村 雪乃 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 主任研究員 (90584384)
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研究分担者 |
関塚 剛史 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 室長 (40462775) [辞退]
グルゲ キールティ・シリ 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, グループ長補佐 (50391446)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 環境化学 / 薬剤耐性 / メタゲノム解析 |
研究実績の概要 |
本課題ではスリランカを対象とし、COVID-19流行下における過剰な医薬品使用の、薬剤耐性菌、医薬品残留物、重金属による環境汚染への影響を明らかにすることを目的とする。 2022年1月、2月、4月、7月、12月にスリランカにおいて病院排水及び環境水を約20地点で採取し、合計約90検体についてメタゲノム解析、物理化学性状の測定、大腸菌群数の測定を行った。一部の検体については大腸菌の分離と薬剤感受性試験を実施した。メタゲノム解析の結果、COVID-19流行前である2016-2018年と比較して、2022年の検体では細菌及び薬剤耐性遺伝子の検出量が多かった。2016-2018年の検体ではStreptococcusやBifidobacterium等の腸管内由来と考えられる細菌の検出割合が高い一方で、2022年の検体ではAcinetobacter、Enterobacter等のGammaproteobacteriaの検出割合が高く、COVID-19流行前後で病院排水の細菌叢が変化したことが明らかとなった。薬剤耐性遺伝子においては、2016-2018年の検体ではblaGESやqacE等のクラスIインテグロンに関連する遺伝子の検出割合が高く、2022年の検体ではmsr(E)、mph(E)等のマクロライド耐性遺伝子や、メタロβラクタマーゼであるblaNDM検出割合が高かった。COVID-19流行前後におけるレジストームの変化は、細菌叢の変化が影響している可能性が考えられた。なお、下水処理後水の細菌及び薬剤耐性遺伝子の検出量は下水処理前水と比較して低く、大腸菌群数、BOD及びCODも低いことから、下水処理により細菌が除去されていることが示された。2022年1月に採取した病院排水では採材地点ごとに分離株の薬剤耐性状況が異なり、病院における医薬品使用状況等が影響していることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は予定していた通りにスリランカで採材を行い、検体を日本に持ち帰ることができた。採取した試料については物理化学性状の測定、メタゲノム解析、一部の検体のみ大腸菌分離と薬剤感受性試験を行っている。メタゲノム解析によりCOVID-19流行前後の細菌叢及びレジストームの変化を明らかにしており、これらの進捗状況から計画通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年に採取した全検体からの大腸菌分離と薬剤感受性試験、医薬品残留物、重金属の検出を行う予定である。また、COVID-19流行前に病院排水中の薬剤耐性菌分布状況を調査していたインドにおいてもスリランカと同様に水試料を採取して解析し、COVID-19流行前後のデータを比較するとともに、スリランカとインドの状況を比較する予定である。インドにおける採材については既に現地の協力者と調整を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は研究代表者が現地に採材に行くことができなかったこと、留学生が日本に来ることができなかったことから、旅費及び人件費の支出がなくなり、次年度使用額が発生した。
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