研究課題
培養ヒト幹細胞を用いた再生医療の普及や産業化のためには、培養幹細胞の品質管理法の開発が喫緊の課題である。申請者らは、深層学習を用いた画像認識と状態空間モデルによる物体追跡アルゴリズムを組み合わせることで、DeepACTと呼ばれる新しい自動細胞追跡システムの開発に成功し、位相差顕微鏡によるタイムラプス画像の細胞動態解析から培養中のヒト表皮幹細胞を非侵襲的に同定することに成功した。この方法は、幹細胞培養管理のデジタル・トランスフォーメーション(DX)に基づいた新しい再生医療用培養幹細胞の品質管理法として期待される。海外共同研究先は、表皮だけでなく、様々な種類のヒト重層扁平上皮幹細胞培養系を確立し、これら幹細胞の可塑性を利用して再生医療に応用しようとしている。本研究課題は、申請者らが開発したこの技術を、海外共同研究者が確立した他のヒト重層扁平上皮幹細胞培養系に応用し本技術の汎用性を向上させ、重層扁平上皮幹細胞を非侵襲的に同定する方法を確立する。重層扁平上皮幹細胞は、高い可塑性を持ち、他の重層扁平上皮を互いに再生することができることから、本研究は、幹細胞培養管理のDXを推進する若手研究者を育成しつつ、患者の状態に合わせて、最適な幹細胞ソースを選択する、新しい再生医療のための基盤技術を創出するものである。令和5年度には、ヒト表皮角化幹細胞の動態解析を行い、細胞外環境の一つである温度が、幹細胞動態を制御することを見出し、論文を発表することが出来た。現在、他の組織幹細胞においても温度が幹細胞動態を制御するのか、さらに温度による幹細胞動態が培養幹細胞品質に与える影響を定量的に解析する手法を開発中である。
2: おおむね順調に進展している
令和5年度には、シンガポールの海外共同研究先を研究分担者と共に訪問し、共同研究成果について有意義な議論を行うことが出来た。特にヒト表皮角化幹細胞については、令和5年度に論文として発表することが出来た。
まず、ヒト表皮角化幹細胞において温度による幹細胞動態制御の詳細な分子機構を明らかにする。また、我々が開発したDeepACTによる培養幹細胞の品質管理システムが、温度による幹細胞動態変化を検出できるかを検証する。さらに、共同研究先が有する他の上皮系幹細胞でも温度の影響を解析する。
研究分担者の一人が都合により、本来予定されていた海外共同研究先への訪問が不可能であったため、研究分担者の本研究費の執行がなされなかった。また、研究代表者の所属先が変更し、異動のため、研究活動が一時的に中断し、研究費の執行が行えなかった。次年度は、研究分担者を含め、シンガポールへ訪問し研究計画を遂行するため、研究費を使用する計画である。
すべて 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
EMBO Reports
巻: 24 ページ: e55439
10.15252/embr.202255439
Experimental Dermatology
巻: 32 ページ: 1982-1995
10.1111/exd.14929
https://sites.google.com/tottori-u.ac.jp/regeneration