研究課題/領域番号 |
21KK0203
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
永井 岳大 東京工業大学, 工学院, 准教授 (40549036)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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キーワード | 色覚多様性 / 感性認知 |
研究実績の概要 |
2022年度は渡航前であることもあり、主に渡航後の研究にスムーズに取り掛かるための準備に時間を費やした。まず、国際比較を行うための準備として、日本人被験者を対象とした予備実験を行った。具体的には、2021年度に行った基課題の実験から明らかになった、色覚型間の色知覚特性の違いが高次色覚課題に関わる情報処理において生じる可能性に着目し、高次色覚課題の特性を明らかにするための一連の実験を行った。その実験では、高次な色認知の一つとして、多色刺激の色統計量と感性の関連性に着目した。具体的に取扱う感性として様々な色分布を持つ抽象画嗜好性に着目し、その感性に関わる色分布の特性について三色覚を対象に検討した。この研究においては、我々が普段曝露される色彩環境が嗜好性を決める情報の一つになると考え、色彩環境の特性に合致する色分布を持つ抽象画ほど好まれるという仮説を立てた。その上で、色彩環境中における色分布の稀有性を機械学習の1種である変分オートエンコーダで定量化した上で、様々な稀有性を持つ色分布の嗜好性を心理物理実験により計測した。その結果、我々の視環境において(少なくとも適度に)稀有性が高い色分布ほど好まれる傾向があることが明らかとなった。この結果は、我々の色彩に関する感性が普段曝露されている色彩環境の特性に強く影響を受ける可能性を示唆する結果である。さらにこれらの結果は、曝露される色情報の異なる3色覚と2色覚では、色に対する高次な感性が異なりうる可能性を示した結果と言える。ただし、稀有性と嗜好性の関連性の強さは、抽象画のパターンによって異なっていることから、単純に色分布のみによって嗜好性が決まっているというよりも、空間的パターンと色分布が組み合わさることで嗜好性が決まると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渡航前までに、日本人を対象とした予備実験を行い、その結果に基づき渡航後の実験を具体化することができた。これにより、渡航後すぐに実験を開始する目処が立ち、研究計画全体をスムーズに進めていくための準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、オーストラリアに渡航し、現地の被験者と日本人被験者を対象に、多色刺激に対する感性(嗜好性)を計測する。特に、人種・文化間の嗜好性の違いと色彩環境を対応付けて統計的に解析することにより、曝露される色彩環境と感性の関連性を明らかにしていく。さらに、色情報が活用される知覚の別の例として、光沢感・透明感などの質感と色彩情報の対応関係についても研究対象とし、共同研究者が持つ仮想現実技術と研究代表者が持つ心理物理学的実験技術を融合することにより、俯瞰的に色彩と感性の関連性を明らかにするための実験方法を検証する。
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