研究課題/領域番号 |
21KK0219
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
豊山 亜希 近畿大学, 国際学部, 准教授 (40511671)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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キーワード | 植民地インド / 海峡植民地 / 環インド洋 / 和製マジョリカタイル |
研究実績の概要 |
2023年度は、2024年度にシンガポール国立大学を受入研究機関としてシンガポールに滞在する予定であることから、その準備期間として位置付けるとともに、本研究に関連した基課題である基盤研究Cの実施最終年度にもあたることから、その発展的課題として本研究を遂行するために、海外渡航中の具体的な調査計画の策定を進めた。特に、基課題において実施したタンザニアのザンジバル島における予備調査から、19世紀後半から20世紀前半にかけて、インド亜大陸を拠点に東アフリカから日本まで横断的に活動したインド系商人の移住先都市と、その生活空間の装飾様式の様式的ヴァリエーションを実証的に考察するうえで調査すべき資料と遺跡を一覧化した。具体的には、ザンジバル島の旧市街であるストーンタウンに分布するインド系商人集落を、ヒンドゥー教、ジャイナ教、イスラームという宗教的帰属に基づいて分類した上で、その宗教的施設(寺院、コミュニティの会館、およびイスラームの場合は墓地)の地理的分布を地図化し、それぞれの現存状況と装飾様式の特徴についてデータ整理を行った。また、建築装飾材として重要な役割を果たした日本製タイルの流通実態について、国立国会図書館に収蔵されている商工省の貿易統計をもとに、量的データの分析作業を進めた。さらに、タイルの運搬にインド洋海域を航行した船舶が重要な役割を果たしたことから、戦前期日本で国際貨物船舶を運航していた船舶会社の社史をあわせて調査し、これらの商業ネットワークが建築装飾の地理的な広がりを促進していたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初どおり2023年度末に渡航先であるシンガポールへ出発し、2024年度はおもにシンガポールを拠点として本課題の遂行に集中できる見込みである。シンガポールを拠点としつつ、一時帰国の期間も考慮しながら、研究対象となる他地域(南アジア、東南アジア、東アフリカ、日本を含む東アジア)への実地調査についても、2024年12月を目途に進める計画を具体的に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、当初計画通り3期に分けてシンガポールに渡航し研究を進める予定である。シンガポールではおもに受入研究機関であるシンガポール国立大学の中央図書館のほか、シンガポール国立図書館、シンガポール国立文書館において、イギリス統治期の都市計画および貿易に関する文献調査を進める予定である。加えて、イギリス統治期に造営されたシンガポール国内の歴史建造物のなかでも、特にインド系移民によって寄進された宗教建築を中心に巡見調査を実施する予定である。さらに、シンガポールとともにイギリスの「海峡植民地」の一部をなしていたマレーシアのペナンとマラッカについても、シンガポール滞在中に巡見調査を行う。また、比較対象として東アフリカのケニアとタンザニアのインド系コミュニティの歴史建造物の調査と、インド系商人と同時期に環インド洋で活躍した中国系商人を施主とする歴史建造物についても、シンガポール、マレーシア、台湾において実施する計画である。調査成果は単著としてまとめる予定である。
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