研究課題/領域番号 |
21KK0224
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
小宮 友根 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (40714001)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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キーワード | 裁判員裁判 / 会話分析 / エスノメソドロジー / bodily reenactment |
研究実績の概要 |
2022年度は9月からUCSBに滞在し、本研究の分析手法である会話分析の技能の向上と、再現実践にかんするデータの分析に取り組んでいる。その成果の一部は、編者として出版に携わった『実践の論理を描く』(勁草書房)という書籍において公刊することができた。 本書の序章では、会話分析(相互行為分析)が、どのような意味で「実践の論理」を描くものであるのかを、会話分析の基礎的な視点の紹介とともにあきらかにした。「実践」という表現は、会話分析の焦点が、あくまで相互行為に参加している人々自身にとって利用可能で観察可能な、相互行為を組み立て理解するためのリソースにあることを示している。他方で「論理」という表現は、そのリソースの解明が、経験的な観察からの帰納なり推論なりによっておこなわれるものではなく、経験に先立ってそれを理解可能にする規則の想起であることを表現している。論文では、会話分析による詳細なデータの分析が、なぜ規則の想起であると言えるのかを解説した。 再現実践については、同書における「再現身体と仮想身体」という論文において、評議参加者が自己の身体を用いて他者の身体を「再現」する実践のバリエーションとその用法について素描した。「再現身体」は、証拠にもとづいて被告人や被害者の事件当時の「身体」を評議の場に再現しようとする実践である。「仮想身体」は、「合理的な人間」であるならば、事件当時の状況においていかなる行為をすると考えられるかを、評議の場で実演しようとする実践である。評議参加者は、両者の実践を、評議コミュニケーションの展開に応じて複雑に組み合わせながらおこなうことで、自身の推論を法的に合理的なものとして提示しようとする。こうした研究は、人間身体の規範性が、いかに人間行為に理解可能性を与えるリソースとなっているかについて示唆を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のとおり、再現実践にかんするデータの分析は順調に進んでいる。分析は、Whitehead博士と定期的にミーティングを持ちながら進め、UCSBの研究者が参加するデータセッションでも報告することで、分析の精度を高めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
再現実践にかんするより精緻な分析について、6月末に開催される国際会話分析学会と、8月に開催されるアメリカ社会学会において報告がアクセプトされている。その後、引き続きWhitehead博士とのミーティングを通して両報告を論文にまとめる予定である。
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