研究課題/領域番号 |
21KK0226
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
小塩 靖崇 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部, 研究員 (10807085)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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キーワード | アスリート / メンタルヘルス / 国際比較 / メンタルヘルスリテラシー / 行動変容 / スクリーニング |
研究実績の概要 |
豪州メルボルン大学で共同研究を実施し、Australian Institute of SportsのMental Health Referral Networkに関する聞き取り調査を行った。このシステムは、専門家に相談しやすい環境を整備する工夫が継続的なデータ収集と分析に基づいていた。また、アスリートがメンタルヘルスについて学び、メンタルヘルスケアを日常生活に取り入れる利点を共有する取り組みや、次世代の子どもや学校教育現場を対象としたメンタルヘルス啓発活動も実施されていた。University of MelbourneのElite athlete mental health teamとの研究知見の1つとして、男性ラグビー選手を対象にしたメンタルヘルスに配慮した環境、メンタルタフネス、メンタルヘルス不調の関連性を検証した。メンタルヘルス不調を評価するK10、メンタルタフネス尺度(MT)、およびメンタルヘルスに配慮した環境の認識を測定するSport Psychological Safety Inventory(SPSI)を用いた。媒介分析により、SPSIがMTに及ぼす直接および間接的な効果をK10を介して検討し、メンタルヘルスに配慮した環境が日本のアスリートのメンタルタフネスをメンタルヘルスの改善を通じて高める可能性を見出した。この研究は、スポーツ界におけるメンタルヘルスに配慮した環境の重要性を強調し、支援的な環境を作るための介入がアスリートのウェルビーイングに寄与することを示唆している。さらに、国際オリンピック委員会(IOC)が公表した「IOC MENTAL HEALTH ACTION PLAN」の日本語翻訳版を作成・公表した。日本でもアスリートのメンタルヘルスを支援する教育・研修プログラムの効果を検証し、より効果的な支援方法を確立することが求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、日豪両国のアスリート、チームスタッフにメンタルヘルス教育プログラムを実施しその効果を直接比較することを予定していたが、日豪で、同日程で同様のプログラムを用いて介入し直接比較することが難しい状況であった。目的であるメンタルヘルスリテラシー教育効果に対する社会文化的背景の影響の検討を行うため、日豪両国で聞き取り調査実施については計画を変更せず遂行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
国際標準のツールキットおよびメンタルヘルスリテラシー教育教材を応用した教育プログラムの開発と公開を目指す。また、日豪で良好な関係を築いてきたラグビー選手会にて、「メンタルヘルス実態およびメンタルヘルスケアニーズ」「メンタルヘルスリテラシー教育効果に対する社会文化的背景の影響」の検討を行う。成果を一般向けに公開できるよう準備を進める。
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