研究課題/領域番号 |
21KK0249
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
森田 能次 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 講師 (40795308)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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キーワード | 融合タンパク質 / ヒト血清アルブミン / 分泌発現 / ピキア酵母 |
研究実績の概要 |
遺伝子組換え技術によって作られたタンパク質(組換えタンパク質)やペプチドはバイオ医薬品としてとして注目されている。しかし、血中半減期が短いものも多く、有効血液中濃度を維持するには頻回投与が必要となる場合が少なくない。これらの課題を克服する方策の一つが、治療用融合タンパク質製剤の合成である。なかでもヒト血清アルブミン(HSA)との融合は、生物学・免疫学的安全性および血中半減期の延長に絶大な効果を発揮する。本国際共同研究では、指向性進化法を用いたアルブミン融合タンパク質の合理的な設計方法の開発を目指す。分子動力学(MD)シミュレーションと指向性進化法により、分泌シグナルペプチドを最適化し、超高発現融合タンパク質の一群を合理的に設計・合成できる手法を確立することを目的とする。 本年度は、ピキア酵母を宿主とするHSAの分泌発現系を構築し、HSAの分泌発現量を評価した。また、分泌シグナルペプチドの部位に、種々の変異導入を行い、変異導入との分泌発現量の相関解析を行った。さらに、共同研究先で構築されたランダム変異導入を行うために、タンパク質の発現量を迅速かつ簡便に評価できる西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)との融合タンパク質(HSA-HRP)の分泌発現系も構築した。今後は、蛍光タンパク質との融合タンパク質の分泌発現系も構築し、分泌効率を評価し、指向性進化法とMDシミュレーションを組合せた合理的な設計方法を開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本国際共同研究では、指向性進化法を用いたアルブミン融合タンパク質の合理的な設計方法の開発を目指す。具体的には、分子動力学シミュレーションと指向性進化法により、分泌シグナルペプチドを最適化し、超高発現融合タンパク質の一群を合理的に設計・合成できる手法を確立することを目的とする。 本年度は、ピキア酵母を宿主とする発現系を構築し、発現量を評価した。まず、N末端に分泌シグナルペプチドを導入したアルブミンの発現プラスミドDNAを調製し、ピキア酵母にDNAを挿入し、寒天プレートで培養することで、形質転換されたコロニーを得た。得られたHSA発現株を培養し、メタノールを添加して発現誘導を行った。菌体を除去後、培地成分のタンパク質定量を行うことで、外分泌されたHSAの発現量を評価した。次に、MDシミュレーションを行った、変異導入されたシグナルペプチドを有するHSA分泌発現系も構築し、変異導入と発現量の相関解析を行った。それぞれのシグナル変異体においても、HSAの分泌発現量が高いことが明らかとなった。さらに、ランダム変異による進化工学のために、迅速なタンパク質発現量を評価するため、HRPとの融合タンパク質の分泌発現系を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、菌体内発現量と菌体外(分泌)発現量を比較するために、蛍光タンパク質との融合も試みる。具体的には緑色蛍光タンパク質(GFP)とHSAとの融合タンパク質(HSA-GFP)を設計し、分泌発現系を構築する。次に、潜在的に有益なアミノ酸位置を特定するために、ランダム変異導入により、網羅的に変異導入されたプラスミドDNAライブラリーも作成する。ピキア酵母にDNAを挿入し、寒天プレートで培養することで、形質転換されたコロニー(変異株)を得る。得られた変異株を培養し、メタノールを添加して発現誘導を行う。HSA-GFPでは、菌体を含む培養液および菌体を除去した培養液の蛍光強度から、全タンパク質発現量および外分泌されたタンパク質の発現量を求め、分泌効率を評価する。分子動力学シミュレーションを実施し、実験結果と比較する。分泌シグナルペプチドに対して、アルブミンや融合タンパク質の発現量、分泌効率の相関を明らかにすることで、高発現融合タンパク質の合理的に設計・合成できる手法の確立を目指す。
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