研究課題/領域番号 |
21KK0252
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
浅沼 春彦 金沢大学, フロンティア工学系, 助教 (10757298)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2023
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キーワード | メタ構造 / 振動発電 / 連成解析 |
研究実績の概要 |
本研究では,構造上に圧電振動ハーベスタを周期配置したスマート発電メタ構造の基礎を構築するため,海外共同研究を実施した.提案構造は,半導体の周期構造と類似したバンドギャップを形成して,発電と振動抑制の両立を可能にする.本年度は機械系・電気系要素の物理モデルの構築とその連成解析手法の開発,1次元はり構造を基にした構造設計法の考案と実証を行った.研究を進めるにつれて申請時には想定できなかった技術課題が分かってきた.開発に時間を要したが,発電回路を含む電気系とメタ構造の機械系の連成解析法の構築に成功した.連成解析と1次元はり構造を用いた実験による検証から,同じサイズの振動ハーベスタを周期配置するメタ構造では発電分布に偏りが生じ,将来のIoTを用いた構造状態推定には適さない事が分かってきた.そこで,発電分布の偏りを低減する新たなメタ構造の開発に取り組み,発電分布の偏り低減とワイドバンドギャップ化を実証した.解析と実験は凡そ同じ傾向を示したが完全には一致しておらず,今後この原因の解明や精度向上に取り組む. また,振動発電で駆動する小型無線センサノードの開発に取り組み,構造振動の加速度波形データの送信に成功した.加速度のRMS値の1点データではなく,波形データを無線送信する事でAI解析との親和性を高める事が出来る.メタ構造上に無線センサノードを取り付け,構造の揺れの様子の観測に成功した.研究を進めるにつれて,無線センサノードの電気二重層コンデンサに蓄積されるエネルギと振動ハーベスタの生み出すエネルギにギャップが存在する事が分かってきた.次年度に,このメカニズムについての解明にも取り組む.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案メタ構造の電気・機械系連成解析は複雑であるため,その解析法の構築にかなりの時間を要したが,開発に成功し,試作前にメタ構造の性能予測が可能となった.解析から1次元はり構造を設計し,実験による検証から発電と振動抑制を両立する周波数帯域の広帯域化(ワイドバンドギャップ)を実証した.また,振動発電のエネルギのみで加速度波形データを送信できる無線センサノードの開発に成功した.回路基板を独自に設計して3cm角の小型化を達成し,タイマー回路を用いた超消費電力化によりデータ容量の大きい加速度波形の無線送信に成功した.開発した無線センサノードをメタ構造に取り付け,構造の振動の揺れの様子の観測に成功した.メタ構造の解析技術を国内学会で,無線センサノードの研究成果を国際学会で発表した.研究を進めるにつれて,同じサイズの振動ハーベスタを周期配置する従来のメタ構造ではIoTを用いた構造状態推定には適さない事,無線センサノードの電気二重層コンデンサに蓄積されるエネルギと振動ハーベスタの生み出すエネルギにギャップが存在する事が分かってきた.これらは申請時には予想できなかった研究課題で,最善の解決策やメカニズムの解明が重要である.これらは実応用上の重要な課題であるため,次年度にその解明に取り組む.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に開発した連成解析技術と1次元はり構造で培った知見を基に,2次元平板メタ構造へ技術を拡張させる.2次元周期構造では,例えば正方格子や六方格子など周期構造の対称性に焦点を当てる.海外共同研究者と共に平板メタ構造の連成解析法を考案し,構造対称性と振動吸収・発電特性との関係を明らかにし,ワイドバンドギャップを発現する周期構造を解明する.解析技術を基に数10~100センチ幅のミニチュア平板構造を設計し,2次元振動を可視化する評価システムの構築や実験による検証を進める.最終的に,振動発電で得たエネルギで無線センサモジュールを駆動して構造の加速度振動波形データを無線送信し,2次元構造の状態推定技術(構造ヘルスモニタリング)の構築を目指す. また,前年度に判明した新たな研究課題の解決にも取り組む.従来のメタ構造の設計手法では発電分布の偏りが問題となるため,それを軽減する構造設計方法あるいは発電回路の開発を検討する.無線センサノードの電気二重層コンデンサに蓄積されるエネルギ量の定量化は実応用の上で重要な課題である.電気二重層コンデンサの詳細な回路モデルを検討して振動ハーベスタとの連成解析を検討し,振動ハーベスタの生み出すエネルギと電気二重層コンデンサに蓄積されるエネルギに差が生じる原因を解明し,蓄積エネルギの正確な定量化を目指す.
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