研究課題/領域番号 |
21KK0254
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
橋本 涼太 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (60805349)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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キーワード | 河川堤防 / 越水侵食 / 数値解析 / Material Point Method / 不連続変形法 / 地盤-流体-構造連成解析 |
研究実績の概要 |
本研究では河川の越水に起因した堤防の侵食・破堤に対する対策工の一つである、川裏法面のブロック被覆による耐越水堤防を対象として、その平時の変形およびその後の越流時の耐久性までを一気通貫に解析する数値シミュレーション技術の開発を目的としている。 具体的には海外共同研究者であるUCバークレーのSoga教授が開発を進めてきた連続体の大変形解析手法の一つであるMaterial Point Method(MPM)を、研究代表者が従来開発してきた不連続体解析手法(Discontinuous Deformation Analysis: DDA)と組み合わせる。地盤と流体をそれぞれMPMで、ことによって、地盤-流体-構造間の相互作用下での挙動を解析する。被覆ブロックをDDAでモデル化する。 令和4年度は、最終的な開発目標である。地盤-流体-構造間相互作用解析の要素技術として非圧縮粘性流体のためのMPMの開発を進めた。海外共同研究者とはオンラインで定式化、プログラム実装について打合せの上、プログラム実装を行った。従来提案されていた非圧縮性流体のためのMPMは、運動方程式と連続式を支配方程式としつつ、両式を分離して段階的に解く半陰解法によるものであった。一方で、陰解法ベースの不連続体解析手法であるDDAとの連成を考えたときには全ての未知数の同時性を満たすことが望ましい。そこで、運動方程式と連続式を同時に解く一体型解法を採用した完全に陰的なMPMを新たに定式化し、プログラム実装した。さらに、盛土内部の浸透現象を考慮するため、ダルシー則に基づく土と水の間の相互作用力を与えた定式化も行った。これにより、盛土の変形が無い状態では、堤防内部の浸透と越流を同時に解析することが可能になった。次年度は地盤の変形を表す固相のMPMとの連成を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
MPMによる非圧縮粘性流体解析は本研究のコア技術の一つである。当初は海外共同研究者が開発済みの半陰解法に基づく手法を取り入れることを検討していたが、完全な陰解法によるMPMを開発したことで安定性の高いシミュレーションが可能になった。本技術は地盤や構造物との連成定式化にも親和性が高く、本研究課題の今後の遂行上の加速が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に開発した非圧縮粘性流体のための陰的MPMをベースに、まず、地盤の大変形を解析するための固相のMPMとの連成解析の実装を進め、堤防盛土と水の相互作用下での侵食挙動を解析可能にする。加えて、地盤と構造、流体と構造の間の接触による相互作用解析の開発を進め、最終的に全てを結合する。 開発手法の妥当性検証に当たっては模型実験を実施する。被覆を設けた盛土に対して水を越流させ、その際の変形プロセスや耐久性を観察する。そして、開発した解析技術による実験の再現を試みる。 実験との比較による妥当性検証が完了したら、多様な外力条件下での挙動をシミュレートし、被覆型の耐越水堤防が持つ力学特性とそれを踏まえた効果的な維持管理指標を検討する。
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