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2023 年度 実施状況報告書

液体メタン/液体酸素ロケットエンジンの革新的レーザー点火技術と燃焼ダイナミクス

研究課題

研究課題/領域番号 21KK0257
研究機関東京大学

研究代表者

中谷 辰爾  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00382234)

研究期間 (年度) 2022 – 2024
キーワードロケットエンジン / レーザー点火 / 化学発光 / 超臨界状態 / 燃焼不安定性 / メタン / 振動燃焼 / 実在気体効果
研究実績の概要

ドイツ航空宇宙センター(DLR)において,メタン/LOxを用いたロケットエンジンモデル燃焼器を使用して実験を行った.レーザー点火を用いることで,ロケットエンジンモデル燃焼器の点火挙動を調べ,その後の燃焼挙動に対して燃焼圧力を亜臨界から遷臨界および超臨界に至る環境下,燃焼室内の複数点における圧力測定に加え,OH*,CH*化学発光測定およびに分光器を用いた化学発光測定を実施した.大気圧近傍から8MPaに至るロケットエンジンモデル燃焼器内の化学発光スペクトルを取得することができた.メタン/LOxを使用したロケットエンジンモデル燃焼器において,大気圧近傍においては310nm近傍のOH*化学発光のピークが最も高かった.圧力が上昇するにつれて350nmから500nmに向けて連続的でブロードな発光強度が徐々に強くなり,CH*の化学発光はほとんど観察されなくなった.5MPaを超えると,これらの連続発光の強度はOH*化学発光の強度を卓越した.このブロードな発光はCO2,H2Oなどに起因すると考えられ,これらの発光プロファイルは圧力環境に強く依存する.
また,大気圧の熱平衡を仮定した化学発光計算に関して,OH*,CH*化学発光を平面火炎バーナー上で測定を行った.熱平衡を仮定した理論計算においては,OH*化学発光では非常に高い温度が幅広い領域において得られた.化学反応励起による影響が強く,エネルギー準位の分布がボルツマン分布から大きくずれていると考えられる.一方で,CH*化学発光では,比較的幅広い範囲において妥当な温度が得られており,ボルツマン分布に従う領域が広いと考えられるが,発光強度が弱い.
メタン/酸素バーナにおいて細フィラメント温度測定法により温度測定を実施し,水蒸気の近赤外発光による温度測定の較正を行った.2400Kを超える高温領域では輝度比が温度に対し比例しないことが示された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ドイツ航空宇宙センター(DLR)に一定期間滞在し,研究活動を実施することができた.DLRの実験設備および可視化燃焼器を使用することで,一般的に実験室では実現困難な高圧力雰囲気中でのメタン/LOx燃焼試験を実施し,亜臨界から超臨界に至る圧力雰囲気中での分光データを取得することができた.OH*化学発光の強度が強く発熱量のマーカーとして使用することができるが,一方でCH*化学発光はほとんど観察されないため解析に使用することが困難な可能性が示された.一方で,430nm近傍を含むブロードで非常に強い化学発光挙動を観察することができた.超臨界に至る化学発光挙動の精密な測定結果は非常に限定的であり,非常に有益である.これらの発光メカニズムを調査し追跡することで燃焼状態の把握の可能性がある.
また,実験室環境においても,1MPa以下のメタン/酸素バーナー上における温度測定を実施することができ,高圧力環境における細フィラメント温度測定法による較正を行い,妥当な温度を求めることができた.これらの環境下における分光測定や温度測定のノウハウを構築することができた.
同時に,急速圧縮機を用いることで,メタン/酸素富化空気,水素/酸素富化空気を用いることで燃焼試験を実施し,350nmから500nmの波長帯においてブロードな発光を確認することができた.
これらの計測結果と測定ノウハウは今後研究を実施する上で必要な知見であり,今後円滑に研究を実施することが可能である.また,高圧力における化学発光を用いた燃焼状態の診断や温度状態の推定,不安定燃焼における高温ガスの流動ダイナミクスを調べるためのマーカーとなり得る.データドリブン手法による燃焼状態の解析につながり,振動燃焼をはじめとする非線形燃焼現象のダイナミクス解明につながると考える.以上のことから,研究進捗は順調であると考える.

今後の研究の推進方策

ドイツ航空宇宙センターにおいて測定した高圧力環境における化学発光挙動の基礎的な挙動に基づき,実験室において急速圧縮機等を用いることで高温高圧環境を作り,化学発光挙動を精密に測定する.エシェル分光器を用いた精密な発光測定あるいはイメージング分光器を使用した単点あるいは多点における高速度測定を実施し,燃焼状態を診断する手法を構築する.また,化学発光を伴う化学反応モデルを構築することで,最初に低圧環境下における数値解析による化学発光挙動の定量的評価の可能性について検討を行う.様々な圧力における実験的計測と数値計算結果を比較することで,これらの化学発光メカニズムが妥当な範囲を明確にする.また,これらの結果の一致やズレを考慮することで,燃焼メカニズムを解析するための燃焼指標の可能性を検討する.圧力レベルに応じたOH*,CH*およびブロードな化学発光挙動を明確にすることで,ロケットエンジン燃焼器内における燃焼診断手法の可能性を追求する.
また,ドイツ航空宇宙センターにおける高圧力燃焼試験のスケジュールが本研究期間内にあれば,分光器および高速度カメラをドイツに持ち込み,高速度で分光測定を実施し,非定常燃焼挙動を精密に調べる.レーザーを用いた計測においては,高圧力環境下における入射光やシグナルの減衰が問題となるため,化学発光ベースの受動的な計測手法は燃焼診断において非常に有益である.高圧環境下におけるこれらの分光特性を明らかにし,燃焼状態の把握に応用する.同時に10点以上の多点の分光計測を実施し,燃焼器の火炎帯や高温ガスを含む各領域の発光特性を明確にする.さらに,信号の次元削減を行い,内在する燃焼不安定性を把握することを試みる.

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公開日: 2024-12-25  

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