研究課題/領域番号 |
21KK0263
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊藤 秀臣 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (70582295)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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キーワード | トランスポゾン / エピジェネティクス / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
トランスポゾンはあらゆる生物のゲノムに複数存在し、ゲノムの多様性・進化を生み出す。トランスポゾンの転移制御は、宿主生物にとって重要であるが、その制御機構は不明な点が多い。トランスポゾンの転移制御機構を理解することは、植物科学の分野のみならず、生物科学全般に共通の重要な課題である。シロイヌナズナをもちいた先行研究で、高温ストレスで活性化するトランスポゾン「ONSEN」を同定し、このトランスポゾンの転移制御機構の解明を目指している。エチルメタンスルホン酸(EMS)による変異原処理によりONSENの転移制御機構が欠損した変異体boils (burst of ONSEN induct ion lines)を作成した。その中で、高温ストレス処理後もONSENの転写レベルが野生型と同じであるにも関わらず、転移が観察される変異体を同定し、boil7 と名付けた。ラフマッピングにより原因因子が座乗する染色体領域を絞り込むことに成功した。しかしながら、原因因子が座乗する染色体領域はまだ広く、特定の遺伝子に絞り込める状態には無い。現在、その領域に座乗する候補遺伝子の変異体をシロイヌナズナのストックセンターから取り寄せてONSENの転移解析を行っているが、今のところ転移が見られる変異体は見つかっていない。 補助事業期間内における渡航前の国内での研究で、boil7 の原因遺伝子が座乗すると予想される染色体領域を狭めたNear Isogenic Line s(NILs)を用いて、原因因子を特定している。現在NILを作成し、次世代シーケンサーを用いた解析を行い、原因因子のDNA配列の変異を同定することで、原因因子を特定中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で海外渡航が制限されていたため。
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今後の研究の推進方策 |
本国際共同研究先では、boil7 の原因因子の機能解析を行う。boil7 の原因因子が既知の因子であれば、その因子と相互作用する因子を同定することで、どのような機構でトランスポゾンの転移を制御しているのか解明する。海外共同研究者は、シロイヌナズナの共免疫沈降法を用いて boil7 の相互作用因子の同定を行う。また、本国際共同研究先では、boil7 のRNA-seq を利用して発現変動解析を行う。その結果をもとに、原 因遺伝子の遺伝子オントロジー解析を行い、どのような経路でONSENの転移の制御に関わっているのか解析する。boil7 の原因遺伝子が未知の 遺伝子の場合は、海外共同研究者は、機能未知タンパク質の機能解明を目指してヌクレオチドや核酸に関わる配列モチーフをもとに、タンパク 質の結晶構造解析を行う。boil7 の原因因子をコードする遺伝子を欠損させた場合、ONSENの転移が見られることを示すためには、boil7 の変異体を用いた実験が必須である。本国際共同研究にて海外共同研究者とともにゲノム編集を行い、野生型シロイヌナズナのBOIL7をコードする 遺伝子の機能を欠損させた変異体を作成する。帰国後の国内での研究は、この変異体を用いてONSENの世代を超えた転移が再現できるか確かめ る。
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