研究課題/領域番号 |
21KK0266
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
吉川 治孝 徳島大学, 先端酵素学研究所, 助教 (60709567)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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キーワード | リボソーム / がん / プロテオーム解析 / サイズ排除クロマトグラフィー |
研究実績の概要 |
翻訳装置リボソームは、がん細胞ではその合成過程の活性化により合成量が増え、その結果がん細胞の成長と増殖に必要なタンパク質量を供給できる。近年では、そのリボソーム自体が構成を変化させることで、疾患特異的な翻訳を行なう特殊なリボソームの存在が考えられている。本研究では、必要なサンプル量と分析感度の問題からいまだ手つかずのままである臨床検体を用いた特殊化リボソーム解析を、研究代表者が開発した効率的かつ高感度なリボソーム分離法Ribo Mega-SECを用いて解析する。そして海外共同研究者が確立している最新のプロテオーム解析技術を融合させることで、がん組織中の特殊化リボソーム解析法を確立し、特殊化がん原リボソームの分子的実体と細胞内機能、細胞がん化との関連を解明することを目的としている。最終的な目標は、特殊なリボソームを標的とする疾患治療戦略に繋げることである。
今年度は外国機関に渡航し、本研究の遂行に重要なMega-SECの立ち上げを行った。渡航先では現所属の分析装置とは異なる装置を用いたが、現所属で得られている分離パターンと同様の結果を得ることができたため、本手法の再現性の高さを確認することができた。また渡航先では当初の計画にはなかった最新鋭の質量分析計を導入したため、その使用方法についてのトレーニングを開始した。最新鋭の質量分析計は高深度でのプロテオーム解析が非常に高いスループットで行うことができる。すなわち本方法の習得により、ごく微量の臨床検体からも高感度にリボソーム構成因子の解析が可能になるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床検体からのリボソーム構成因子の解析までは至っていないものの、臨床検体から得られる実サンプル量を考慮すると、上述の最新鋭の質量分析計による超高感度プロテオーム解析法の習得は本研究にとって非常に有益なものと考えられる。そのため当初の計画からはやや遅れているものの、研究プロジェクト全体を通して見ると着実に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は渡航先ですでに立ち上げを完了しているMega-SEC法を用いて、臨床検体由来のリボソームを抽出し、最新鋭の質量分析計による超高感度プロテオーム解析法によって、がん特異的なリボソーム構成因子の同定を行う。これにより、がん組織特異的な特殊化リボソーム解析法を確立する。さらに、立体構造の観点からもリボソーム特異性の解析を行い、がん組織特異的な特殊化リボソームの分子的実態の解明を目指す。
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