研究課題
オキシリピン類は、天然の高度不飽和脂肪酸であるアラキドン酸やドコサヘキサエン酸などが体内で酸化的に代謝されて得られるプロスタグランジン類やSPM Precursor(抗炎症性脂質代謝物前駆体)などの生理機能性脂質の総称である。これらは非常に多岐にわたる化学構造を有しており、化学的な全合成もそれぞれ高難度または未報告である。本研究では、各種の生合成においては極めて短工程でオキシリピン類が生成していることに着目し、複数の酵素を用いたカスケード反応によってアラキドン酸やドコサヘキサエン酸などから効率的にオキシリピン類を合成する手法を確立することを目的とした。このため、脂質の化学合成を得意とする代表者と酵素の多段階合成を得意とする海外受け入れ研究者のHailes教授の国際共同研究を実施する。研究初年度である2023年度は当初は3か月の渡航期間を設定したが、研究全体の立ち上げ期における連携を重視し7月-12月の合計5か月間へと変更した。これまでに研究計画の化学合成上の課題である一段階目の過酸化反応を確立することに成功した。また、並行して今後の各種反応に用いるための合成基質も準備が整った。これらの成果はSPM PrecursorであるLipoxinの新たな合成手法になりえる。今後はSPM Precursor類の効率的な合成手法を確立することと併せて、プロスタグランジン類についても合成方法の確立を目指す。SPM Precursorは各種のLOXによって検討することが可能であるが、プロスタグランジン類の検討にはCOX類の調達が必要であり、研究計画に従って愛媛大学の無細胞系培養システムを活用したタンパク質の精製を実施する。既にCOX-3については予備実験を終えており、これらの成果を活かして次年度以降の研究を遂行する。
1: 当初の計画以上に進展している
国際共同研究として開始直後からの連携を重視し、渡航日程を3か月から5か月に拡大して実施した。これにより、酵素反応の検討が効率的に遂行でき、技術上の課題であった不飽和脂肪酸の過酸化反応を実現することに繋がった。この方法であればSPM Precursorを残り1段階で合成することが可能であり、本研究計画にとって大きな前進が得られている。
今後はSPM Precursor類の効率的な合成手法を確立することと併せて、プロスタグランジン類についても合成方法の確立を目指す。SPM Precursorは各種のLOXによって検討することが可能であるが、プロスタグランジン類の検討にはCOX類の調達が必要であり、研究計画に従って愛媛大学の無細胞系培養システムを活用したタンパク質の精製を実施する。既にCOX-3については予備実験を終えており、これらの成果を活かして次年度以降の研究を遂行する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
Biochimica et Biophysica Acta(BBA) -Molecular and Cell Biology of Lipids
巻: 1867 ページ: 159158-159168
10.1016/j.bbalip.2022.159158