研究課題/領域番号 |
21KK0271
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
今井 伸夫 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (00722638)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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キーワード | 土壌呼吸 / 菌根菌 / 菌糸生産 / 菌糸呼吸 / 炭素フラックス |
研究実績の概要 |
2022年11月より、オックスフォード大 地理・環境学スクール 環境変化研究所 生態系ラボにおいて、菌根菌への炭素配分に関する2つの研究を開始した。 1. ヤチダモ(セイヨウトネリコ)はヨーロッパの温帯林における主要構成樹種であるが、近年、これを枯死させる病原菌が急速に分布を広げ、ヤチダモ枯れ(Ash dieback)被害がヨーロッパ各国で深刻な問題になっている。ヤチダモはアーバスキュラー菌根性樹種である一方、同じく主要構成樹種であるブナ(ヨーロッパブナ)やナラ(ヨーロッパナラ)は外生菌根性樹種である。急速な樹種組成の変化が物質循環にどのような影響を及ぼすのかを調べるために、オックスフォード大演習林Wytham Woodsでは、ブナ・ナラ林、ヤチダモ林、環状剥皮をしたヤチダモ林(Ash diebackを模した処理)間で様々な生態調査が行われている。この実験系を用い、2023年3月から、菌糸イングロースコア法を用いて、菌根菌糸の生産、呼吸、炭素利用効率(生産/生産+呼吸)を3森林間で比較する研究をスタートさせた。 2. 従来型農業に対して、持続可能性の観点から自然再生型農業が近年注目されている。自然再生型農業が持つ炭素固定機能を評価するため、これまで多くの研究が土壌呼吸速度を調べてきた。土壌呼吸は、植物根、腐生性微生物、菌根菌の呼吸の合計である。これまで、こうした成分ごとの呼吸速度に及ぼす自然再生型農業の影響を調べた研究はない。そこで、2023年2月より、従来型農地と休耕サイクルが異なる複数の自然再生型農地において、上記の土壌呼吸成分を分離測定する研究をスタートさせた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、オックスフォード大演習林Wytham Woodsにおいて、土壌栄養傾度に沿った菌根菌への炭素配分比を調べる予定であった。しかし、プロット間の土壌栄養濃度の差が予想より低く、良好な結果が得られない可能性が高いことが分かった。そのため、土壌環境が大きく異なる2つの系(Ash-diebackサイト、従来vs.自然再生型農地)において、菌根菌への炭素配分を調べることとした。渡航後にこれら2つに関する研究準備を始めたが、順調に測定に必要なイングロースコアやPVCパイプの設置を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
菌根菌の生産・呼吸速度が高まってくる2023年4月まで、順調に測定に必要なイングロースコアやPVCパイプの設置を進めることができた。今後は、Ash-diebackサイトにおいては2023年10月にかけて約2か月ごとの集中測定・サンプリング、自然再生型農地においては2023年夏にかけて約3週間ごとの測定を行う。
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