研究実績の概要 |
唾液腺再生医療の究極の目標は、患者由来細胞から唾液腺を創生し移植することである。しかし、真に機能的で形態が複雑な唾液腺を作出している例はいまだない。申請者はマウスES細胞由来の唾液腺オルガノイドの誘導法(Tanaka J., et al., Nat Commun, 2018)、および基課題としてヒトiPS細胞由来唾液腺オルガノイド誘導法を開発した(Tanaka J., et al., Nat Cell Biol, 外部査読中)。しかし移植後の再生唾液腺はサイズが小さく、機能は不十分であり、臓器サイズと機能を確保できる別の手法の開発が望まれた。機能的な臓器創生技術として、胚盤胞補完法は唾液腺創出に極めて有望である。Dr. Moriは機能的な肺臓器創生に次世代胚盤胞補完法を用いて成功した(Mori M, et al., Nature Med, 2019)。Dr.Moriは唾液腺創生に必要な遺伝子改変マウス、さらには大動物を用いた唾液腺臓器創生に必要な技術基盤を有する。そこで本研究では、唾液腺臓器規定サイズを探索し、機能的な唾液腺臓器の創生に取り組んだ。本年度は唾液腺欠損マウスの胚盤胞にマウスiPS細胞を注入し、唾液腺が補完されるか否かの検討を行った。検討の結果、唾液腺切除マウスへの胚盤胞補完によって野生型と同等のサイズを有する多能性幹細胞由来の唾液腺がマウス体内で作出可能であることが明らかとなった。
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