研究課題
プロバイオティクスは適正量を摂取した際に宿主に有益な作用をもたらす微生物群の総称であり、特定のプロバイオティクスが消化器癌や乳癌など多様な癌腫に対して優れた抗腫瘍活性を発揮することが数多く報告されている。本研究においては私が麹菌の培養上清より同定したHeptelidic acidが小児がんに対して抗腫瘍効果を発揮するかを検討した。これまでにHeptelidic acidは小児B細胞性急性白血病細胞を用いたin vitroモデル、患者由来細胞を用いたex vivoモデル、及びin vivo Patient derived xenograft (PDX)モデルにおいて優れた抗腫瘍効果を発揮することを確認した。また、Heptelidic acidによる抗腫瘍効果は既存抗癌剤であるビンクリスチンと相乗的に作用することを明らかにした。PDXモデルにおいて、重篤な有害事象は確認されないにもかかわらず抗腫瘍効果が確認されたことから、Heptelidic acidは効果のみならず安全性に優れた治療薬候補であることを実証した。また、Heptelidic acidはネクロプトーシス経路の活性化因子であるRIPK1を介して抗がん作用を発揮していることを見出した。Heptelidic acidによる抗腫瘍作用は解糖系関連酵素の阻害によるATPの枯渇によりもたらされていることを明らかにした。このほかにもHeptelidic acidは小児T細胞性急性白血病細胞や神経膠芽腫、小児脳腫瘍をはじめとする多数の小児がん細胞に対して抗腫瘍効果を発揮しうることを見出した。さらに構築したプロバイオティクスライブラリーを用いて黒麹や乳酸菌の培養上清から新たに抗腫瘍活性を発揮するHPLC分画の回収に成功した。現在質量分析解析により抗腫瘍分子の同定を試みている
1: 当初の計画以上に進展している
私が同定したプロバイオティクス由来抗腫瘍分子がPDXモデルにおいて抗腫瘍効果を発揮することを確認できた。また、Heptelidic acidが抗がん作用を発揮するメカニズムを見出した。さらに新規の抗腫瘍分子候補をプロバイオティクス培養液から抽出することに成功した。
Heptelidic acidによるRIPK1以外の細胞死誘導経路の関与を明らかにする。新規の抗がん分子を同定し、PDXモデルを用いて効果を検証していく。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Pediatric Hematology and Oncology
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