研究課題/領域番号 |
21KK0297
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
宮内 彰彦 自治医科大学, 医学部, 講師 (50570397)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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キーワード | MECP2 / 遺伝子治療 / 脳オルガノイド / miRNA |
研究実績の概要 |
本研究は、病因遺伝子の機能喪失でRett症候群を発症し、過剰に発現してもMECP2重複症候群を発症するような遺伝子発現量が規定されている疾患でいかに遺伝子発現量を調節し、AAVベクターを用いた遺伝子治療を開発するかという点である 。その解決方法として、micro RNA(miRNA)を用いた発現制御の方法に焦点を当て、Rett症候群/MECP2重複症候群の遺伝子治療を開発することが目標とする。miRNAは、様々な蛋白をコードするRNAの分解や翻訳を制御する機能があり、発現制御を要する難治疾患の新規治療法として有望と考えている。そのため、神経形成の研究の中でも特にmiRNAの知識が豊富であるBalor College of Medicineの海外共同研究者、Ronald Parchem博士の所属する研究室にて、申請者が2022年7月より研究を行い、miRNAに関する指導を受けている。2022年度の渡航後は、MECP2をターゲットとするmiRNAの一つで、同研究室で大きな実績をあげているmiR302ノックアウトマウスなどを用いてmiRNAに関する技術を学んでいる。miR302は神経発生に大きく関与するmiRNAで、ノックアウトにより神経管の閉鎖が障害されノックアウトマウスは致死的となる。しかしmiR302のヘテロ接合性欠損マウスは生存可能であり、一方で水頭症を来すなど発現量に依存して神経発生に与える影響が変わるなど性質をもっており、MECP2をターゲットとするmiRNAとしてMECP2重複症候群やMECP2の機能喪失変異によるRett症候群の治療開発(miRNAの導入による遺伝子作用の調節方法などの技術)と関連づけて検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳オルガノイドの作成については、実際に細胞を用いた検討に入っており、今後、疾患ES細胞や患者iPS細胞を用いた実験に進む見込みである。また、miRNAを用いるための知識、技術についても、MECP2をターゲットとするmiRNAの一つであるmiR302のノックアウトマウスや、Wnt1、Sox1などの脳神経発生マーカーを利用した数種類のCREマウスを用いて順調に習得が進んでいる。他にも、ES細胞やiPS細胞の神経細胞への分化、miR302と関連するmiR290など数種類のmiRNAに関する検討などを習熟した研究者から指導を受けている。また、渡航前には遺伝子発現調節機構の開発に先行して、MeCP2欠損マウス(Rett症候群モデルマウス)の大槽にMECP2遺伝子を導入したAAVベクターの投与を行っており、同マウスの生存期間や行動実験による評価を進めるなど、概ね順調に実施ができていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はmiRNAを用いた遺伝子発現調節機構の開発と、患者iPS細胞由来神経細胞を用いた中枢神経の治療評価系の構築が短期中期的な目標である。MECP2重複症候群の患者iPS細胞を用いて脳オルガノイドを作成し、miR302をはじめとするmiRNAを利用した重複抑制による治療の開発を目指していく。既存のmiRNAがMECP2に与える影響を調べながら、まずはMECP2重複症候群を対象として、遺伝子特異的なmiRNAを設計することも検討しつつMECP2遺伝子の発現抑制から調節を試みる。また中枢神経の治療評価系の構築のために、脳オルガノイドの作成をMECP2重複症候群患者由来の培養細胞から行う。Rett症候群の遺伝子治療では、MECP2の過剰発現を抑制可能なmiRNAを搭載したベクターで、内在性あるいは外来性のMECP2遺伝子の発現調節を行う見込みであるため、miRNAによりプロモーターの発現調節を可能にしたMECP2 導入AAVベクターを作製して神経細胞へ導入し、発現調節する方法を開発していく。
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