研究課題/領域番号 |
21KK0298
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
齋藤 恒徳 日本医科大学, 医学部, 助教 (00716631)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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キーワード | オートファジー / マイトファジー / プレセニリン2 / ミトコンドリア / パーキン / PINK1 / 心筋細胞 / 拡張型心筋症 |
研究実績の概要 |
32例のDCM患者にDNAの全エクソーム解析を行い心筋症関連116遺伝子およびオートファジー関連44遺伝子に着目したところ、ATG2B (c.1939C>T) およびPSEN2 (c.1262C>T) の変異がDCMの原因である可能性が示された。そこでPSEN2の機能解析を行い、PSEN2はミトコンドリア選択的オートファジー(マイトファジー)を司る蛋白質パーキンの細胞質からミトコンドリアへの細胞内移送を担っていることを明らかにした。このことはオートファジー関連遺伝子変異が心筋細胞障害の原因となりうることを示している。 PSEN2がパーキンの細胞内輸送を司る現象の原理・機序は不明であった。プレセニリン2(PS2)ノックアウト(PS2KO)およびプレセニリン1(PS1)KO細胞のミトコンドリア膜電位測定およびミトコンドリア膜電位を反映する蛋白OPA1の同位体分析を行った結果、PS2およびPS1はミトコンドリア膜電位を維持する機能は持たないことが分かった。マイトファジーの代表的な系はPINK1-ユビキチン-パーキン系である。この系を詳細に逆流して解析した結果、PS2KOではユビキチンのリン酸化が減弱しており、PINK1の切断が正常に行われていないことも明らかになった。一方でPS1KOではそのようなことはなく、PS2とPS1とは蛋白分解酵素γセクレターゼの触媒蛋白という類似の機能を持つ一方でマイトファジーに関する役割はPS2が重要であることが分かった。 研究開始以来、コロナ等の事情により長期渡航が難しい状況が続いたため、zoom meetingの利用により海外共同研究者と密に連絡を取ることで国内での研究実施でも海外渡航と同様の結果を得られるよう研究方法を模索してきた。結果、海外渡航と同様あるいはそれ以上の結果が得られた。最終年度は追加の実験をしつつ成果のとりまとめを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PS2とPS1とのマイトファジーにおける役割の違いを明らかにすることができた。特にPS2がPINK1-パーキン系マイトファジーに対し決定的な役割を演じていることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
パーキンの細胞内輸送を司るものとしてTP53がある。p53活性が下がるとオートファジーが活性化すること、パーキンが細胞質からミトコンドリアへ移動することは既報である。p53抑制剤であるPFTaを使用した予備実験で、p53を抑制するとAMPKαのリン酸化が亢進(オートファジー活性化)し、PINK1の切断が抑制(マイトファジー活性化)することを明らかにした。PS2とこれらの関係を調べることがPS2のマイトファジーにおける機序の解明につながりうると考えている。
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