研究課題
1. 年金加入履歴に基づく「くらしと仕事に関する青年インターネット特別調査」(21~35歳、約3000人)および「解雇経験者特別調査」(21~72歳、約1500人)を実施し、基本的な集計・分析を行った。2. 複数世代にわたる合理的資源配分の問題を厚生経済学・社会的選択理論に立脚しながら考察した。さらに、世代別選挙区の導入が世代間問題に与える影響を世代重複モデルを用いて理論化した。3. 新しい世代間雇用問題として「孤立無業者」を定義し、その実態を解明した。その結果、(1) 20~59歳の未婚無業者のうち、ふだんずっと1人でいるか、家族としか一緒にいることのない人々である孤立無業者は2011年時点で162万人に達し、2001年からほぼ倍増した、(2) 20代など若年無業者で孤立無業が急増した、(3)家族の庇護にある孤立無業者ほど求職活動を断念する傾向がある、こと等が分かった。4. 新卒直後に正規社員として入職した人を取りあげ分析したところ、(1)平成23年4月時点における年齢が30歳代であった男性の場合、5年未満で初職企業を離職した人の割合は39%であった、(2)若い世代ほど早期に離職する傾向があった、(3)早期離職者は30歳時点で正規の職に就いていない割合が高かった。5. くわえて、(1)初職が非正規であると、その後、社会経済的に不利な立場に立だされ、主観的厚生も低下する、(2)福井県では希望が「仕事」から「家族」に転換しつつある、(3)喫煙・低学歴・長時間労働・通勤等は中高年の運動習慣に有意な阻害要因である、(4)子供の出産後1年以内に母親が仕事に復帰すると母乳育児期間は短くなる一方、父親がフレックスタイム制で働くと母乳育児期間が長くなる、こと等を明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の研究計画に記載した研究をほぼ計画どおりに実施しただけでなく、当初計画の趣旨(雇用と子育てに焦点をあてたパネルデータの構築・分析)を首尾よく達成するため、当初計画では具体的に記載しなかった調査(青年層〈21~35歳〉および解雇経験者〈21~72歳〉を対象にした「くらしと仕事に関する特別調査」(ねんきんネットからの転記データを含む))をLOSEFの一環として実施した。その結果、平成24年度までに実施した30~71歳対象のインターネット調査と併せ、最長45年にわたる賃金稼得記録(行政記録の転記データ)を含むパネルデータを一挙に構築することが成就され、LOSEFの内実は当初計画を遙かに超えた長期的かつ包括的なものになった。このようなパネルデータ構築はパネルデータ研究面における日本の遅れを急速に取りもどす有力な契機の1つとなるだろう。その契機を一層確実なものにするため、当初の研究計画になかった大規模な第20回国際パネルデータコンファレンスを平成26年7月に東京で開催する準備を主催者として周到に進めた。加えて、家庭内における雇用の世代間継承問題を究明するなかで発見された「孤立無業者」は当初研究計画にはなかったものであり、既に政策や法制度に向けた新たな視点として内外で取り上げられている。さらに、ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルを用いて、高齢女性の貧困率が今後大きく上昇することを定量的に示した。その上で、公的年金制度などについて、戦後家族(専業主婦世帯)をモデルとした制度から21世紀型の日本社会に合致した仕組みに改めることの必要性について論述する等、evidence-based policyの立案例を具体的に提示した。
総じて当初の研究計画・方法に大きな変更はない。研究に一段と厚みを加え、その内容を深化させる。そのため、まず、当初の調査計画案を充実・飛躍させ、長期的かつ包括的パネルデータとなったLOSEFの第2回調査を組織メンバー全員が一丸となって継続・実施する。LOSEF調査結果の解析を継続させることは言うまでもない。さらに、大規模な第20回国際パネルデータコンファレンスを主催者として平成26年7月に東京で開催する。その上で5年間にわたる研究の成果をとりまとめる。
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