研究課題/領域番号 |
22000002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大谷 栄治 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (60136306)
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研究分担者 |
鈴木 昭夫 東北大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20281975)
寺崎 英紀 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (50374898)
村上 元彦 東北大学, 大学院理学研究科, 准教授 (50401542)
平尾 直久 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (70374915)
宮原 正明 広島大学, 大学院理学研究科, 准教授 (90400241)
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研究期間 (年度) |
2010-04-21 – 2015-03-31
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キーワード | 地殻・マントル / 固体地球物理学 / 岩鉱・鉱物・鉱床学 / 地球惑星内部構造 / 高温高圧 |
研究概要 |
両面加熱ダイヤモンドアンビルを用い、1.180GPaでのFe-Fe3S系の融点を決定し、共融点の組成を推定した。2. Fe-Ni合金およびFe-Ni-Si系の溶融関係を100GPaを超える条件で明らかにした。3. 高温高圧でのFe-Si合金へのカリウムKの溶解度を決定し、核の熱源の量を推定した。4. -Fe_3Cにおいては、200GPa・3000K以上の条件でFe_3C相が安定であることを明らかにし、Fe-C系での共融点の組成を推定した。5. Fe-Si-S系の融解関係を外核の条件である135GPa迄の条件で明らかにした。これらの結果を総合して、核の温度構造を推定した。そして6. 金属鉄合金を共存するメルトの組成を分析し、固体鉄には珪素が濃集し液体には硫黄が濃集すること、したがって、内核は珪素に富み外核は硫黄に富むことが明らかになった。 この研究で確立した粉末X線解析とメスバウア分光の同時測定システムを用いて、下部マントルおよび外核の圧力で、Mg-ペロブスカイト、FeO及びマグネシオブスタイトについて、スピン状態の変化を明らかにした。更に、X線非弾性散乱法によってhcp-Feの音速を核の内部の圧力である164GPaにおいて、ポータブルレーザーシステムを用いて、3000Kを超える高温での音速測定に成功した。また、FeSメルトの縦波速度を4-6GPaの条件で測定した。これらの成果は、世界に先駆けて実現したものであり、地球深部研究において世界最先端を開くことができた。これらの結果を用いて、地震波速度、密度を説明する核のモデルを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の課題については、Fe金属合金と金属鉄メルト間のSiとSの元素分配の結果を得たこと、高圧下でのメスバウア分光測定とX線回折法の同光学系での測定システムを用いて、ペロブスカイト、FeO、マグネシオブスタイトのスピン状態を明らかにしたこと、X線非弾性散乱法によつて170GPaまでの圧力で、hcp-FeとともにFeH, Fe3S相の音速を測定できたこと、さらに164GPaで3000Kでの音速測定をデータを世界に先駆けて得たこと、また、鉄硫黄系液体の音速の測定に成功したことなど25年度の課題を十分に達成することができた。加えて、これまでの実験の結果を総合して、地球核の化学組成のモデルを前倒しで、提案することができた(文献)。(文献)E. Ohtani, Chemical and Physical Properties and Thermal State of the Core. Physics and Chemistry of the Deep Earth, First Edition. Edited by Shun-ichiro Karato. 2013 John Wiley & Sons, Ltd. Published 2013 by John Wiley & Sons, Ltd.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年は本特別推進研究の最終年である。昨年度内に予定の研究開発を完成し、予定の実験データを得ることができた。本年度には、以下のようにさらに実験データを付け加え、成果を取りまとめる。昨年度には、X線非弾性散乱法によって、核の条件で3000Kを超える条件での鉄の音速測定を核内部の条件である164GPaの圧力のもとで世界に先駆けて成功させ、内核の構造と温度条件が議論できる実験データを得た。第一に本年においても昨年この研究に参加したX線非弾性散乱法の専門家であり、ダイヤモンドアンビル高圧装置によるポータブル両面レーザー加熱システムの開発に携わった若手研究者(福井裕史博士)、およびに、超高圧条件での固体鉄合金と金属液体の間の元素分配の研究を確実に行うために分析電子顕微鏡による元素分析、透過電子顕微鏡による鉱物組織観察の専門家である優れた若手研究者(宮原正明博士)と緊密に協力し、すでに結果が得られつつある核の条件での鉄および鉄ニッケル合金、鉄シリコン合金の音速測定を行う。また、核の条件での固体鉄合金と液体金属の元素分配の測定実験を完成させる。これによって、25年度において、提案した地震波データを説明する内核と外核の化学組成と温度構造のモデルを、今年度の実験結果および新たな観測結果等を加えることによって、より良いものに改訂する。
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