研究課題
今年度においては、①超高圧高温における含水ケイ酸塩の安定領域および地球内部の水素の循環、②地球内部における炭素の挙動、③金属鉄合金の音速と状態方程式、④隕石の衝突過程の4つの課題に関する実験的を中心に研究を推進した。以下に概要を紹介する。第一の高圧高温下における含水ケイ酸塩鉱物の安定領域の研究においては、地球内部の下部マントルに安定に存在する含水ケイ酸塩鉱物(含水H相、含水δ相、H-δ相固溶体)の安定領域の詳細を明らかにした。そして、この鉱物が水素を地球の中心部(核・マントル境界)に輸送する重要な役割をすることを明らかにした。第二に、地球内部における炭素の挙動の研究においては、マントル物質の相転移と融解に対するCO2の効果、マントルに存在する炭酸塩多成分系の高温高圧下の相平衡関係を解明した。さらに、マグネサイトとSiO2の反応を明らかにし、特定の条件では、ダイヤモンドが生じることを明らかにした。第三に、超高圧高温下における金属鉄および鉄-軽元素系の音速測定と状態方程式の測定を行った。地球核の構造と化学組成を解明するためには、それを構成すると予想される金属鉄合金の音速および密度を測定することが不可欠である。ダイヤモンドアンビル高圧装置とスプリングエイトの精密X線非弾性散乱ビームラインを用いて、hcp構造を持つ金属鉄、Fe3Sなどの音速を室温高圧で測定した。また、レーザー加熱システムおよび外熱金加熱方式を導入して、163 GPaで3000Kまでの世界最高の温度での測定に成功した。また金属鉄、鉄ニッケル合金、様々な鉄―軽元素系(S, C, H)合金の状態方程式を高温高圧下において決定した。第四に隕石中に存在する高圧鉱物を探索し、隕石の衝突履歴を解明した。具体的には2013年にロシアのチェリャビンスクに落下した隕石に高圧鉱物中に高圧鉱物であるヒスイ輝石を発見した。また、小惑星帯起源と思われるユークライド隕石に、コーサイト、ステイショバイトを見出した。
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