研究課題
前年度に引き続き、北西太平洋シャツキー海台の北西の海域Aおよび南東の海域Bにおける海底長期観測を継続した。平成25年8月に実施した傭船(OOC(株)の作業船「かいゆう」)による観測航海により、これまでに設置した全ての自己浮上型機器(広帯域海底地震形BBOBSおよび海底電磁力計OBEM)を回収した。さらに一部の観測点にはBBOBSやOBEMを再設置して、長期観測を続けるとともに、新たな観測点に装置を設置して観測網の充実をはかった。この航海で回収したデータと、平成24年度までに回収しデータの統合解析を行なった。海域Aと海域Bの平均海洋底年代はそれぞれ一億三千万年および一億三千五百万年とわずかな違いしかないので、両者からはほぼ同じマントル構造が得られるものと予想された。しかし、解析の結果はこのわずかな年代の違いではとても説明し難い程の大きな違いを示した。昨年度末の段階では、海底電磁気観測から求めた電気伝導度構造についてのみこのような傾向が示唆されただけであったが、地震波速度構造および異方性についても、海域Aと海域Bの違いは顕著なものがあり、「ふつう」の海洋マントルに年代(リソスフェアの冷却)だけでは説明のつかない強い不均質が存在することがより確かなものとなった。一方室内実験からは、上部マントルの主要鉱物であるオリビンの結晶軸選択配向に、粒界すべり卓越の拡散クリープ下での変形が重要な役割を果たすことが示され、これによって観測で得られている地震波速度異方性の分布をよく説明できた。さらに、追加配分によって、クリープ試験において電気伝導度測定および弾性波速度測定のその場での同時測定ができる変形試験機を導入した。来年度に完了する予定の海底観測データの解析結果に、この実験システムによる物性測定結果を組み合わせることにより、粘性・電気伝導度および地震波速度(異方性も含めて)などのデータの全てを説明する最適解(=海洋マントルの描像)を明らかにする準備が整った。
2: おおむね順調に進展している
当初計画では平成25年度に予定していた最先端の観測装置の回収が平成26年度にずれ込んだというマイナス要素はあるものの、回収したデータからは興味深い結果が得られつつ有る. また、これまでに設置した海底観測点数は、当初予定を上回つているのに加えて、最終年度の航海では当初計画になかった制御震源による構造探査を行なうので、より詳細な構造推定ができるものと期待される。室内実験も、順調に進んでいる。
最終年度(平成26年度)には、研究船と傭船による合計2回の航海を実施して、これまでに設置した全ての機器を回収する予定である。傭船航海では、制御震源による探査を行い、新たな情報を得る。観測機器回収後は速やかにデータを解析して成果を得る。そのための解析手法等の準備は十分に整っている。
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