研究課題/領域番号 |
22000004
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研究種目 |
特別推進研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 俊則 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 教授 (90220011)
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研究分担者 |
大谷 航 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 准教授 (30311335)
三原 智 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80292837)
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キーワード | 素粒子実験 / 国際研究者交流(スイス、イタリア、米国、ロシア) / ミュー粒子 / 超対称性 / 大統一理論 / PSI / ニュートリノ / 液体キセノン |
研究概要 |
平成22年度に取得したデータの物理解析は順調に行われ、解析アルゴリズムの改良や測定器の再測量などによって主要な系統誤差を削減し、測定精度を大きく改善することができた。7月には平成21年度に取得したデータの最終解析結果と合わせて、前人未到のμ→eγ事象探索感度を達成した。残念ながらμ→eγ事象の発見には至らなかったが、これまでの崩壊分岐比の上限値記録を約5倍改善し、標準理論を超える超対称大統一理論などの新しい物理に対してこれまでにない厳しい制限を与えた。この結果は欧州物理学会HEP2011国際会議の招待プレナリー講演で森が発表し、Physical Review Letters誌に掲載して、記者会見を行った。 平成23年度もMEG実験を継続、前年度に比べより長期にわたって安定したμ→eγ事象探索データの収集を行って、最終的に前年度の約2倍の物理データを取得することができた。このデータの物理解析も順調に進み、解析手法の改良などによってさらに探索感度を向上させて、平成24年度中には最終結果が得られる見込みとなった。(その後平成25年3月に最終結果を発表した。) 将来の究極感度実験に向けた開発研究も、液体キセノン測定器に使用する新しい光センサーの開発を中心に平行して行われたが、平成23年11月にPSIの液体ヘリウム供給設備が故障してビームラインの超伝導電磁石の運転ができなくなったため、予定していた研究の一部を翌年度に繰り越して行った。研究は順調に進み、平成24年度中にはMEG実験を基にした究極感度のμ→eγ探索実験の提案ができる見込みとなった。(その後平成24年12月に実験提案書をPSIに提出した。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
PSI研究所設備の予期せぬ故障により研究の一部を翌年度へ繰越すことになったが、全体として研究は順調に進み、当初予定よりも早く平成24年度中に究極感度探索実験の提案ができる見通しとなった。また、測定器較正やデータ解析手法の改善などにより、平成23年度取得のデータにより崩壊分岐比で既にマイナス13乗台の探索感度に到達する見込みとなった。(その後実際に平成24年12月には実験の提案書をPSI研究所に提出し、翌1月に研究委員会により承認された。また平成25年3月には、μ→eγ事象の発見には至らなかったが、その崩壊分岐比に対してマイナス13乗台半ばの上限値を与えて、より一層厳しく新物理を検証することができた。これは平成23年度に発表した結果よりさらに4倍高い探索感度に相当する。)
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今後の研究の推進方策 |
測定器較正やデータ解析手法の改善などにより当初の見込みよりさらにバックグラウンドを抑制することが可能となったため、平成25年度にもデータ収集を行って現MEG実験として到達できる最高の感度を目指す。究極感度探索実験については、現MEG実験のコンセプトと実験装置を基にして、探索感度をさらに一桁改善できる実験の設計がほぼ完成した。そこで今後はその実現を目指して、測定器プロトタイプによる開発研究から実際の実験装置の建設まで、本研究内で可能な限り準備を進めて行く。平行して究極感度探索実験の具体的な実施計画や運転経費等についての検討も行う。
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