研究課題/領域番号 |
22000004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 俊則 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 教授 (90220011)
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研究分担者 |
大谷 航 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 准教授 (30311335)
三原 智 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80292837)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 素粒子実験 / 国際研究者交流(スイス、イタリア、米国、ロシア) / ミュー粒子 / 超対称性 / 大統一理論 / PSI / ニュートリノ / 液体キセノン |
研究実績の概要 |
平成24年度もMEG実験は順調に実施され、長期にわたって非常に安定にmu->e gamma崩壊探索のためのデータ収集が行われて、平成20年の本格測定開始以降最も多くのデータを取得した年となった。 並行して前年度までに取得したデータの物理解析も精力的に行われた。陽電子飛跡再構成アルゴリズム、ガンマ線パイルアップ解析等の改善により、探索感度のさらなる向上に成功した。改良した解析アルゴリズムを用いて平成23年に取得した新しいデータを解析、さらに21、22年に取得した以前のデータについても再解析を行った。残念ながらmu->e gamma崩壊事象の発見には至らなかったが、崩壊分岐比に関してこれまでで最も厳しい制限(5.7x10^-13以下)を与えた。この結果は平成25年3月に国際会議の招待講演で発表し、記者会見を行った。国際ジャーナル誌にも掲載された。これは超対称大統一理論をはじめとする標準理論を越える新しい物理に対して非常に厳しい制約を課す結果であり、関連論文に多く引用されて世界的に大きく注目された。 究極探索感度の将来実験に向けた研究では、実験の実現に不可欠な測定器性能大幅改善に向けた各種要素開発に取り組んだ。たとえば、陽電子タイミングカウンターのプロトタイプを用いた性能を実証し、液体キセノンシンチレーション光に感度が高い新型光センサーの開発に成功するなど、開発は極めて順調に進んだ。 これらの成果をもとに究極感度探索実験の実験計画を立案、ポールシェラー研究所に実験提案書を提出した。提案書は高く評価され、平成25年1月にポールシェラー研究所の国際研究委員会により承認された。 研究の途中で新たに開発された新技術を取り入れて開発中の光センサーを大幅に性能改善するため、その製作と試験を翌25年度に繰り越して実施することとした。これによる研究全体の進捗に対する影響は特になかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
MEG実験では、順調なデータ収集によるデータ統計量の増加に加え、陽電子飛跡解析、ガンマ線パイルアップ解析におけるアルゴリズム改良などにより、当初の計画以上に探索感度を改善することができた。 改良した解析アルゴリズムを用いて平成21年から23年に取得したデータを解析、25年3月その解析結果を公表した。残念ながら今回の解析ではmu->e gamma崩壊事象は発見されなかったが、崩壊分岐比に関してMEG実験の前回の結果に比べて4倍、以前の実験と比べると20倍厳しい上限値を与えることになった。 究極感度探索実験については、各種測定器要素開発が予想以上に順調に進み、実験実現への見通しが立った。その成果に基づいて探索実験の計画立案を行い、実験提案書をポールシェラー研究所に提出、平成25年1月に承認された。研究期間内に究極探索実験の計画立案を行うことを目標としていた当初の計画以上に研究が進んだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年は、現行MEG実験のデータ取得最終年となる。予定されているビームタイムで安定した効率の高いデータ取得を行い、着実にデータ統計を増やす。現在解析中の24年に取得したデータとあわせてデータ統計量は倍増する見通しである。あわせて解析アルゴリズムのさらなる改善にも取り組み、現行MEG実験測定器で到達可能な最高感度でのmu->e gamma崩壊探索を行う。 究極感度探索実験については、プロトタイプ検出器を用いたビーム試験などにより新測定器の性能実証試験を進め、測定器建設に向けた準備を可能な限り進める。
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