研究課題/領域番号 |
22000005
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
田村 元秀 国立天文台, 光赤外研究部, 准教授 (00260018)
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研究分担者 |
臼田 知史 国立天文台, ハワイ観測所, 准教授 (10311177)
佐藤 文衛 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (40397823)
早野 裕 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (80390623)
GUYON Olivier 国立天文台, ハワイ観測所, RCUH職員 (90399288)
黒川 隆志 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40302913)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光学赤外線天文学 / 太陽系外惑星 / 補償光学 / 赤外線素子 / 波長校正 / 分光器 |
研究概要 |
本研究では、高コントラスト赤外線装置を用いて、我々の太陽系の惑星に似た系外惑星を直接撮像すると共に、原始惑星系円盤の詳細構造を描き円盤から惑星が形成される過程を解明し、巨大惑星の多様性の起源とその形成を解明する。さらに、世界最高精度の赤外線ドップラー観測装置を開発し、ハビタブルな地球型系外惑星を多数検出する。そのために、波長校正、分散素子、赤外波面補償光学という赤外線新技術開発を推進する。これらの観測の結果を惑星形成理論と比較し、系外惑星の起源・形成を解明する。 今年度は、アンドロメダ座カッパ星の巨大惑星を直接撮像により発見し、出版した。2009年に発見したHAT-P-7の伴星候補を直接撮像により確認し、逆行惑星の起源を議論した。その他いくつかの恒星のまわりの伴星候補天体の検出に成功した。PDS70、SAO 206462 、MWC480、MWC758、UX Tauなど数多くのG型星およびA型星のまわりの原始惑星系円盤においてギャップやアームなどの微細構造を直接撮像により発見し、日米の天文学会で発表した。関連する、星形成領域の円偏光と生命のホモキラリティー、低温褐色矮星の観測的研究を行なった。年度中に30編以上の査読論文を出版し、計6件のプレスリリースを行なった結果、各種メディアで広く取り上げられた。 開発的研究としては、新規に開発する超高精度分光器IRDの光学系最終設計、分光器の性能を左右する回折格子の製作、室内実験用プロトタイプ分光器の製作、天体光・コム光導入のためのファイバー実験、真空冷却槽の製作などの開発を進め、SPIEおよび学会で報告した。専門家による装置設計国際レビューも行った。また、1.6ミクロン帯光周波数コムの製作を進め、サイエンス班によるM型星のまわりの惑星の検討を継続し、学会等で報告した。さらに、約1000素子相当の超補償光学系の試験観測を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すばる望遠鏡による系外惑星・円盤直接観測探査(SEEDSプロジェクト)の推進については、系外惑星探査と円盤観測の双方を有機的に結び付けることで、世界的にもユニークでインパクトのある研究成果を当初の予定以上に出版し、かつ、広報普及を行っている。研究チームが保守・整備を担当する赤外線観測装置(HiCIAO)もトラブルはなく、すばる戦略枠としての観測を予定以上のペースで推進している。プロジェクトに関与する国内外の多数の共同研究者とも、月例会議やワークショップの開催などを通して連携が取れている。高精度近赤外線分光器(IRDプロジェクト)の開発もほぼ順調に進んでいる。国際レビューも完了し、部分的に実機製作も開始した。また、レビューで指摘された短波長化のための仕様変更も進め、より高い速度精度の達成を目指している。プロトタイプ分光器を完成させ、既存の高分散分光器を用いた観測も継続して進めている。
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今後の研究の推進方策 |
SEEDS プロジェクトについては、今後も年間25夜程度の観測を進める予定である。これによって、直接観測による系外惑星と円盤撮像の例を増やし、遠方系外惑星の統計、および、その形成理論について、当初の目的であった観測的制限を与えることができると期待される。個々の円盤の議論は、偏光差分観測の活用により、当初の想定以上に多くの科学的成果をもたらしている。IRDプロジェクトは、今年度から開始した実機製作を継続し、光周波数コムと検出器系についても製作・最適化試験を継続する。これらのアセンブルも今年度中に開始する。コストは増加するが、レビューで指摘のあった短波長域の活用も考慮し、速度精度の向上をはかる。さらに、来年度のハワイにおける調整の準備も観測所スタッフと共に進める。既存の高分散分光器を用いた高精度赤外観測も継続して行い、解析手法・ソフトウエアの開発に役立てる。また、サイエンス班を中心として、既にM型星まわりの惑星の考察を広く行ったが、今後はIRDに最適かつ現実的な観測計画を立案し、すばる望遠鏡への観測提案としてまとめる。
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