研究課題
本研究では、高コントラスト赤外線装置を用いて、我々の太陽系の惑星に似た系外惑星を直接撮像すると共に、原始惑星系円盤の詳細構造を描き円盤から惑星が形成される過程を解明し、巨大惑星の多様性の起源とその形成を解明する。さらに、世界最高精度の赤外線ドップラー観測装置を開発し、ハビタブルな地球型系外惑星を検出する。そのために、波長校正、分散素子、赤外波面補償光学という赤外線新技術開発を推進する。これらの観測の結果を惑星形成理論と比較し、系外惑星の起源・形成を解明する。今年度は、すばる戦略枠SEEDSプロジェクトと一環として、比較的年老いた太陽型恒星GJ504を周回する惑星の発見を直接撮像により発見し、出版した。これは、進化モデルの不定性に依存し難く、直接観測された惑星の中で最も軽いものののひとつで、確実な惑星であると考えられる。この結果を記者会見し、国内外の400以上のオンラインメディアで紹介された。昨年度に発見したアンドロメダ座カッパ星を周回する惑星の多色直接撮像を行い、低温天体であることを確認した。プレアデス星団における系外惑星直接探査について出版した。さらに、若い恒星であるRY Tau、SR21のまわりの原始惑星系円盤において従来に未検出の微細構造(立体構造および波長で異なる空隙の見え方の有無)を直接撮像により発見し、出版した。関連する、星形成領域の円偏光と生命のホモキラリティー、低温褐色矮星の観測的研究を継続して推進した。系外惑星に関する国際研究会をハワイ観測所と共に開催し、200人近くの参加者があった。年度中に17編の査読欧文論文を出版し、計4件のプレスリリースを行なった結果、各種メディアで広く取り上げられた。開発的研究としては、本研究で新規に開発中の超高精度分光器IRDの光学系を修正し、従来のJ, Hバンド(1.2-1.7 micron)の同時観測波長域を、Y, J, Hバンド(0.9-1.7 micron)同時観測にまで拡張することに成功し、これに伴って、使用する非線形ファイバーを見直し、波長校正用の光周波数コムの広帯域化アップグレードも進めた。その他、新規に開発した回折格子の評価、天体光・コム光導入のためのファイバーの選択と評価実験、低振動真空冷却槽の製作などの開発を推進し、国内外の学会および国際研究会で報告した。また、サイエンス班によるM型星のまわりの惑星の検討を継続し、すばる望遠鏡への提案としてまとめている。さらに、約1000素子相当の超補償光学系の試験観測を進め、性能向上を確認した。そのための、カメラ部分の改良も行った。
1: 当初の計画以上に進展している
太陽系外惑星およびその誕生現場である原始惑星系・残骸円盤の直接観測観測(すばるSEEDSプロジェクト)は、2009年の観測開始からの4年間、極めて順調に進んできている。晴天率こそマウナケア山頂の標準的な75%程度であるが、本研究チームが保守・運用する観測装置によるトラブルは皆無である。本研究は、惑星探査と円盤観測の双方を有機的に結び付けることで、世界的にもユニークでインパクトのある研究成果を当初の予定以上に出版し、かつ、広報普及を行っている。今年度に記者会見を行ったGJ504b惑星の発見報告は世界的な反響があった。主催した国際研究会への参加者は2009年のものより参加者が3割上増加した。プロジェクトに関与する国内外の多数の共同研究者とも、月例会議やワークショップの開催などを通して連携が取れている。高精度近赤外線分光器(IRDプロジェクト)の開発もほぼ順調に進んでいる。ただし、レビューで指摘された短波長化のための仕様変更も進め、より高い速度精度の達成を目指した。そのための観測波長帯の拡大を行ったため、予算の一部を繰り越した。それ以外の実機用の光学系も準備出来ている。また、サイエンス班による事前観測および観測検討も急ピッチで進んでいる。
太陽系外惑星およびその誕生現場である原始惑星系・残骸円盤の直接観測観測(すばるSEEDSプロジェクト)については、平成26年度が最終年度に当たる。悪天候による時間損失の補填については観測所に認可されなかったため、共同利用観測の枠内で今後も年間20夜程度の観測を進めるように、観測提案を積極的に行っている。これによって、惑星・円盤候補のフォローアップを行い、直接観測による系外惑星と円盤撮像の例を増やし、遠方系外惑星の統計、および、その形成理論について、当初の目的であった観測的制限を与えることができると期待される。初期の2-3年間のサンプルによる統計的研究についての予備的な結果も既にいくつかのカテゴリー別に査読論文化している。今後は5年間サンプルのものをまとめる。個々の円盤の議論は、今年度も当初の想定以上に多くの科学的成果をもたらしており、記者会見では、そのギャラリー画像も公開した。高精度赤外分光器IRDの開発プロジェクトは、昨年度から開始した実機製作を継続し、今年度行った波長帯広域化と光周波数コムのリモート制御化を進める。検出器系についても製作・最適化試験を継続する。これらのアセンブルとハワイへの輸送は平成26年度が中心となる。今年度から進めている装置持ち込みのための準備も観測所スタッフ及びハワイ大学共同研究者と共により緊密に進める。観測ターゲットとなるM型星の事前観測も継続して行う。可視光高分散分光器の解析ソフトウエアを元にIRD用の解析ソフトウエアの開発を進める。サイエンス班を中心として、IRDに最適かつ現実的な観測計画を立案し、すばる望遠鏡への観測提案を行う。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち査読あり 17件) 学会発表 (54件) (うち招待講演 5件) 備考 (1件)
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