研究課題/領域番号 |
22000006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長野 哲雄 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (20111552)
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研究分担者 |
平田 恭信 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (70167609)
花岡 健二郎 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 准教授 (70451854)
寺井 琢也 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (00508145)
上野 匡 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (60462660)
小松 徹 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (40599172)
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キーワード | 蛍光プローブ / 光増感剤 / MRI造影剤 / ケミカルバイオロジー / 分子イメージング / 臨床診断 / 化合物スクリーニング / 有機光化学 |
研究概要 |
交付申請書に記した実施計画に則り、平成23年度は主に以下の3つの項目について研究を行った。 (1)動脈硬化部位を検出するMRI造影剤の開発とin vivoイメージングへの応用 22年度までに開発した造影剤の更なる機能向上を目指して、Gdイオンを分子内に複数導入した造影剤およびその水溶性誘導体を設計・合成した。これらの造影剤は狙い通りLDL泡沫化マクロファージに対して選択的な集積を示した。更に、動脈硬化モデル動物であるApoEノックアウトマウスやWHHLウサギを用いたin vivoイメージング実験において、動脈硬化巣をMRIで可視化することに成功した。 (2)NPPを標的とした蛍光プローブの開発とスクリーニングへの応用 NPP2と反応して蛍光強度が上昇するプローブの開発に成功し、東京大学創薬オープンイノベーションセンターから提供された化合物(およそ80000)を用いて阻害剤スクリーニングを行った。また、22年度までに開発したプローブを利用したNPP6阻害剤のスクリーニングも行った。得られたhit化合物を基に構造展開を行うことで、それぞれの標的酵素に対して選択的に、nMオーダーで作用する新規阻害剤の創製に成功した。更にNPP2については、X線結晶構造解析による結合様式の解析にも成功した。 (3)珪素を用いた新規長波長蛍光団の開発と蛍光プローブへの応用 代表的な緑色蛍光団であるフルオレセインに珪素原子を導入した新規蛍光分子TokyoMagenta(TM)類を開発した。TMは600nm付近に吸収・発光ピークを有しており蛍光量子収率も高いため、赤色蛍光プローブの骨格として有用と考えられた。そこで実際にβガラクトシダーゼ活性検出プローブならびにCa^<2+>プローブの開発を行い、生細胞イメージングや脳スライスイメージングへの応用を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的として設定した5項目(長波長蛍光プローブ、光増感剤、MRI造影剤、化合物スクリーニング、疾患マーカー検出)については計画通り多くの成果が得られており、13欄に記載する多数の論文発表(多くは国際一流紙)・学会発表を行っている。更に、研究開始当初は予想していなかった興味深い知見や有用な光機能性分子も数多く獲得している。例えば珪素を用いた蛍光団開発においては、当初の予想以上に優れた性質(波長、量子収率)を有する分子であるTM類の開発に成功した。TM類は中性と酸性とで大きな吸収極大波長の変化を示すことから、フルオレセインとは異なる方法で機能性プローブの設計が可能になることが示された。実際、この性質を活用することで赤色のβガラクトシダーゼ活性検出蛍光プローブの開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
珪素導入フルオレセイン類を初めとする長波長蛍光団を用いた蛍光プローブは、光の組織透過性に優れているため本研究の最終目標で訪る医療への応用に適している。そこで、これらの新たな蛍光分子を用いて癌や虚血などの疾患部位を可視化する機能性蛍光プローブの開発を推進していきたい。創薬研究への応用を目指したプローブについては、これまで開発したプローブにはバックグラウンド蛍光の影響を受けやすいという問題点があった。そこで今後は、長寿命発光を有する希土類錯体を基本骨格としたプローブを開発することで、更にS/Nの高いハイスループット評価系の構築を目指す。また、疾患部位の可視化を目指したMRI造影剤の開発も引き続き行う予定である。
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