研究課題/領域番号 |
22000008
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 栄一 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (00134809)
|
研究分担者 |
佐藤 佳晴 (株)三菱化学科学技術研究センター, 太陽電池プロジェクト, 主幹研究員 (10501380)
越野 雅至 独)産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 研究チーム長 (00505240)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-21 – 2015-03-31
|
キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 太陽光発電 / 選択的有機合成 / 低環境負荷プロセス / 有機エレクトロニクス |
研究概要 |
本年度は太陽電池開発における未解決課題であるデバイス構造の制御および相分離構造分析に向け, 合成及び解析手法の開発を行った. (1)56πメタノフラーレン誘導体の開発 : 嵩高さの小さいジヒドロメタノ基の導入により, 高いLUMO準位および電子移動度を有する種々の56πフラーレン誘導体を開発した. これらをアクセプターとして用いたP3HTとのバルクヘテロ型有機薄膜太陽電池は総じて高い開放電圧を示し, 最大で6.4%の変換効率を得ることに成功した. (2)フラーレン二量体を用いた有機ラジカルFET : 炭素-炭素単結合で繋がったフラーレン二量体を固体状態で加熱すると, 結晶格子サイズをほとんど変えることなく結合開裂して安定なラジカルを生じることを見いだした. この特異的な性質を利用して, 非線形的な温度依存性を示す有機FETデバイスを作製することに成功した. 本成果は有機スピンエレクトロニクス研究やフラーレンを材料とした電子輸送材料の開発に重要な指針を与えるものである. (3)単一パーフルオロアルキル鎖の電子顕微鏡イメージング : 単分子実時間TEMイメージング法によりカーボンナノチューブの内部に包接もしくは外部に結合したパーフルオロアルキル鎖およびアルキル鎖の単分子観察を行った. その結果, 個々の有機分子について, その立体配座が炭素-炭素結合の分解能で解析できることを示した. (4)低環境負荷型有機合成反応の開発 : 鉄触媒による炭素-水素結合活性化を鍵として, sp3炭素上でのアリール化反応, 芳香族化合物のアミノ化およびアリル化反応を開発した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始当初に設定した次の3つの目的 : (1)有機半導体の設計・合成および(2)分子組織体のナノレベル構造制御法を開発し, (3)高効率有機太陽電池実現に結実させる, についてはいずれも既に目標を達成し, 太陽電池の学理を探究できる環境が整った. 現在は「有機太陽電池の学理を化学, 物理学, 工学など幅広い観点から研究する」という別次元のステージに突入している.
|
今後の研究の推進方策 |
残る1年間の研究期間内で, これまで開発してきた多数の有機半導体化合物群, およびこれらの分子のナノレベル組織化について構造解析を通して蓄積してきたデータを活かし, デバイス物性と分子物性の間を埋めるのに必要な学理を探る. この基礎概念は本申請研究の主題としてきた有機薄膜太陽電池に限らず色素増感太陽電池や他の有機エレクトロニクスデバイスの開発へと繋げられる広範な拡張性をもつものとなる.
|