研究課題/領域番号 |
22000014
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西村 いくこ 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00241232)
|
研究分担者 |
山田 健志 基礎生物学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (00360339)
嶋田 知生 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (20281587)
田村 謙太郎 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40378609)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | シロイヌナズナ / 細胞内膜系動態 / 小胞体 / 細胞骨格 / 環境応答 / 環境ストレス / 生体防御 / 植物免疫 |
研究実績の概要 |
本研究では,小胞輸送系を含む細胞内膜系の動態という視点から,植物の感染防御応答や環境ストレス応答を解析し,細胞から個体レベルでの植物の生存戦略の理解を目指している.植物細胞内膜系による感染防御応答及び環境ストレス応答の制御に関する当該年度の成果は下記の通りである. 1.感染ストレス応答 (1) 小胞輸送不全変異体プールから選抜した非病原性菌の感染抵抗性不全変異体6種類について,それぞれの原因遺伝子を同定し,各変異体の感染シグナルの受容から過敏感細胞死に至る素過程における表現型解析を行った.次年度も解析を継続する.(2) 真菌が感染した葉では,小胞体由来のオイルボディに抗菌物質2-hydroxy-octadecatrienoic acid (2-HOT)を合成するための2つの酵素が誘導・局在化することを見いだした.新規のオイルボディ依存的な真菌感染防衛系を提唱するために,次年度も解析を継続する.(3) 私たちが見いだした植物生体防御系ERボディに注目して,特異的膜タンパク質の機能解明(Yamada et al., 2013)とERボディを含む小胞体の形態形成に関わる因子ERMO3の機能解明(Nakano et al., 2012)を行った.
2.環境ストレス応答 (1) 気孔分化を促進するSTOMAGENの過剰発現体を用いて,気孔密度の人為的な上昇により光合成速度を30%まで上昇できる事を証明した(Tanaka et al., 2013).(2) 小胞体ネットワーク形成とその維持機構を明らかにするために,新たな小胞体形態異常を示す変異体を取得した.次年度も解析を継続する.(3) ミオシンXIのホモログの一つが,植物の屈性運動のブレーキとして働くことを示し,その調節が花茎の繊維細胞で行われている事を明らかにした.植物の屈性の屈性の微調整システムの提唱に向けて,次年度も解析を継続する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物細胞内膜系による感染防御応答の研究では,細菌,真菌,食植生昆虫に対する防御系として,植物が小胞輸送装置や小胞体由来のオイルボディとERボディを駆使していることやその実体の解明が進んだ.一方,植物細胞内膜系による環境ストレス応答の研究では,分泌性シグナル因子の利用により,光合成能力の増進が証明され,応用面で注目された.他の環境シグナル応答研究は次年度以降も継続・発展させる.このように当初の計画通り,おおむね順調に進める事ができた.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに,植物の感染防御応答および環境ストレス応答の制御について,細胞内膜系の動態に負うところが大きいことを示してきた.この成果をベースとして,今後は,細胞内膜系のorganizationとdynamicsそのものを支えている分子機構の解明を目指し,これを基盤とする植物の細胞応答について研究を進める.
|