昨年に発表したデータとして重要なことは、第一にAIDのプロモーター解析を行い、この中でAIDがBリンパ球に特異的になおかつ活性化されたときに発現される制御領域を同定し、培養細胞中でのそのエレメントの役割を報告した。第二に、AIDのN末端領域に点突然変異(G23S)を導入したノックインマウスを用いて、AIDによる体細胞突然変異が腸管における免疫レパートリー形成に不可欠であり、腸管内細菌との相互作用により腸管系の獲得免疫系のレパートは形成がはかられていることを明らかにした。第三に、クラススイッチにおけるターゲットの決定にヒストンH3K4トリメチルが不可欠であることを明らかにした。このヒストン修飾にはFACTコンプレックスと呼ばれるSSRP1とStp16複合体が不可欠であり、この両者いずれかをノックダウンしても領域の転写制御は低下しないが、クラススイッチにおけるDNA切断が著しく低下することを明らかにした。なお、未発表の成果としてAIDのターゲットをゲノムワイドに決定し、免疫グロブリン以外に未知のターゲット領域を十数個同定した。またAIDがTリンパ球に発現されることを明らかにし、これが加齢とともに上昇することを示した。最後にTopoisomeraseの翻訳がAIDで抑制されるしくみを明らかにするためにGFPとTopoisomeraseメッセンジャーRNAの複合体を作り、CH12細胞中で3'UTRにTopoisomeraseメッセンジャーRNAの翻訳抑制機能が存在することを明らかにした。
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