研究課題/領域番号 |
22000015
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
本庶 佑 京都大学, 医学研究科, 客員教授 (80090504)
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キーワード | 体細胞突然変異 / クラススイッチ組換え / RNA編集 / 大規模シークエンス / FACT複合体 |
研究概要 |
A.AIDによるTop1蛋白質低下のメカニズムの解明 Top1 3' UTRにAgo2タンパク質がシークエンス特異的に結合することを明らかにした。現在、この塩基配列を約20塩基対の領域に同定し、それぞれの点突然変異の導入によりどの塩基配列がマイクロRNAを介してAgo2と結合するかの検討を行っている。今回、Top1遺伝子のヘテロザイゴートマウスを作製し、このマウスで体細胞突然変異が著しく亢進していることを示し、AIDの作用にTop1の関与をさらにin vivoで確認した。 B.AIDのターゲットがNon-B構造を取ることの証拠 S領域などの反復配列がNon-B構造を転写の際に取り易いことはすでに多くのグループから報告がある。我々は、抗体遺伝子以外で高頻度にDNA切断を受ける新たな領域を4座同定し、その周辺にいずれも反復配列が多数存在することを明らかにした。 C.FACT等のヒストンシャペロンにより、ヒストンH3K4me3がクラススイッチに必須であることの確認 あらたにSPT6とSPT5のノックダウンを通じて、ヒストンH3K4me3がS領域のDNA切断ターゲット認識部位として不可欠なことを明らかにした。現在、H3K4me3トリメチル以外の修飾がいかに関与するか、また、これと体細胞突然変異における相関の研究を行っている。 D.AIDのC末端の役割について AIDのC末端ミュータントを用いてクラススイッチにおけるDNA結合の様式に大きな差が出ることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果によりAIDがTop1を介してDNAを切断すること、その際にAIDの低下と転写の亢進によりS領域のNon-B DNA構造をとること等の仮説を提示していた。近年他のゲノム不安定化機構においても全く同様のしくみがとられていることが明らかとなり、我々のモデルの妥当性が多くのグループによって認識されることとなった。また、この仕組みのマイクロRNAの同定については、Top1メッセンジャーRNAの3' UTRに塩基配列特異的にAgo2が結合することを同定し、実験的にも順調な進展がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を迅速に推進するためには、ゲノムワイドのディープシークエンス決定が必要である。このため、ゲノム研究支援プロジェクトに応募したが、採択されなかった。この結果、我々の研究の進展に大きな障害が出た。大規模塩基配列決定の支援が望まれる。
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