研究課題/領域番号 |
22000015
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
本庶 佑 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (80090504)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 体細胞突然変異 / クラススイッチ組換え / RNA編集 / DNA修復 |
研究概要 |
<AIDによるTop1翻訳阻害のメカニズムの解明>本年度はAgo2タンパク質がTop1 mRNAに結合する特異的部位をPAR - CLIP法によって同定した。一箇所はAIDに依存しない領域であり、一箇所はAID刺激時のみに結合する領域であった。さらにこの結合部位の近傍でmiRNAが直接結合する塩基配列の決定を行い、現在これに結合するmiRNAの同定を進めている。 <AID依存DNAターゲット切断の特異性決定メカニズムの解明>AIDによる切断ターゲット部位にはNon-B構造をとる塩基配列が存在することを明らかにした。さらにS領域の単鎖塩基配列に特異的に結合する人工タンパク質(TALE)を発現させると、転写を阻害せずにクラススイッチ(CSR)を阻害することを発見した。このことはS領域が部分的に単鎖構造をとり、それがCSRに重要なことを示し、我々のモデルと一致する。 <AID依存切断後のUNGによる体細胞突然変異(SHM)とクラススイッチ組換えの制御>Top1切断によって生じる単鎖ギャップにおいて、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UNG)が酵素でなく、正しく修復する酵素群(BER)の足場タンパク質として働きRev1を足場タンパク質とする変異を導入する酵素群(error – proneポリメラーゼ)と競合的に結合することを発見した。CSR組換えを起こすためにはメガベース領域の離れた二箇所のS領域間でシナプスを形成することが重要である。UNGはこの段階において53BP1とDNA PKcsと協調して働くことを明らかにした。UNGはさらにその後のDNA切断後の修復にも関与し、DNA断端の接近保持に重要な役割をすることを明らかにした。なお、AIDのC末端側によるRNA編集によるあらたな産物もこの段階で協調的に働く証拠を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、予定していたAIDによるmiRNA制御に関しては、確実に進展を見せており、Top1 mRNAへのmiRNAの結合領域の確定まで進み、現在、大量の塩基配列決定によりmiRNAの同定を進めている。今回さらに特異的塩基結合人工タンパク質TALEを用いた新たな方法によるNon-B DNA形成の証拠を得た。またUNGが体細胞突然変異には抑制的に逆にクラススイッチには亢進に関わる分子的なメカニズムを明らかにし、従来DNAディアミネーション学説では説明できなかった現象をほぼ解明した。
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今後の研究の推進方策 |
まず第一に、結合Top1 mRNAに、AID依存性に結合するmiRNAを同定することに大きな精力を費やす。さらに切断後のDNA修復の過程として生じるSHMとCSRのメカニズムについてUNGを通じた新たな制御機構を解明し、AIDによる抗体記憶形成の分子機構に関する全貌解明を目指す。
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