研究課題
<AIDの構造と機能> AIDが一量体の他に二量体を形成し、それぞれ異なるRNA結合タンパク質(hnRNP)と結合することを発見した。すなわち、単量体はhnRNP Kと結合し、その結合はRNA依存的である。二量体はhnRNP Lと結合し、その会合はやはりRNA依存的である。我々はすでにC末端の変異によりAIDが組換え反応を遂行できず、クラススイッチ阻害を引き起こすことを示している。C末変異体では二量体を形成できないので、二量体形成とhnRNP Lの結合によるRNA認識がクラススイッチ組換えに関わるタンパク質生成に必須と推定され、その検証を続ける。<AIDによる特異的DNA切断機構> 我々はすでにtopoisomerase1 (Top1)がAID発現によって低下し、その結果反復配列の多い免疫グロブリン(Ig)遺伝子座にNon-B構造を形成すること、さらにIg遺伝子にヒストン修飾H3K4Me3やヒストンシャペロンFACTが集積することを示した。今回あらたにSmarka4と呼ばれるクロマチン制御タンパク質がH3K4me3-FACT Top1のコンプレックス形成に不可欠であることを発見した。また、Top1はAIDによりそのC末端にマイクロRNAが結合し、その結果翻訳が低下することを明らかにした。<AIDによるクラススイッチ組換えの仕組み> C末端に変異があるAIDでは組換えがうまくいかないのは、二カ所の切断DNA断端を相互に近傍に手繰り寄せるシナプス形成がでないことが原因であることを明らかにした。このシナプス形成にはUNGが足場タンパクとして必要であり。Brd4と呼ばれるヒストンγH2AXを認識する結合タンパクも関わることを明らかにした。以上の発見により、AIDの機能についての大筋が明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
1)当初計画していたAIDによる特異的なDNA切断のしくみに関して、Top1とNon-B DNA構造、またクロマチンのH3K4me3修飾ならびにヒストンシャペロンFACTの関与がSmarca4というクロマチン制御タンパク質の関与により分子レベルで明らかにされた。このことによりAIDによるDNA切断の基本的なしくみが明らかになった。2)AIDのC末端に依存する活性は長らく不明であったが、本研究により切断DNA断端同志のシナプス形成にかかわることを明らかにした。さらにこのシナプス形成にかかわる因子として新たにヒストン修飾リーダーであるBrd4とUNGが足場タンパク質としてかかわることを明らかにした。3)Ape1はDNA脱アミノ仮説ではDNA切断酵素として提唱されていたが、我々はApe1が3'5'エクソヌクレアーゼであることを明らかにした。DNAディアミネーション学説の大きな根拠であったUNGとApe1によるDNA切断という考えを完全に打ち破る結果を得た。以上の成果は想定以上の前進である。
これまでの研究により、AIDの生理的機能の大枠については明らかになった。残された課題はAIDの生化学的な機能である分子構造の解明がある。このために今後はX線構造解析の専門家である京大医学研究科岩田想教授らと共同でAIDの結晶構造の解析を行う。また、AIDのコファクターとして単離したhnRNP KおよびhnRNP Lとの共結晶を作成することを目標とする。AIDのターゲットRNAの同定がhnRNP KとhnRNP Lが共役因子として同定されたことにより非常に容易になった。今後、免疫沈降法とRNA塩基配列決定との組み合わせやプロテオミクス解析等によって行う。
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http://www2.mfour.med.kyoto-u.ac.jp/
http://www.med.kyoto-u.ac.jp/organization-staff/research/doctoral_course/r-070/
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