研究課題/領域番号 |
22220001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村田 智 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10334533)
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研究分担者 |
葛谷 明紀 関西大学, 工学部, 准教授 (00456154)
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 講師 (20511249)
関山 浩介 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40293675)
野村 慎一郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50372446)
藤本 健造 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90293894)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | DNAナノエンジニアリング / 分子ロボティクス / DNAナノ構造 / 分子デバイス / 分散・協調 |
研究概要 |
コンパートメント作製:アルギン酸ゲルビーズをコアとしてY-motif DNAのゲル薄膜からなるコンパートメント作製技術を確立し、一定鎖長以上のDNA単鎖を保持できることを確認した(村田)。また、油中水滴エマルションの界面をテンプレートにしたマイクロカプセルの作製についても検討し、正に帯電した界面活性剤分子で界面を作ることにより,負に帯電したY-motif DNAが界面に集積して膜状の構造を取ることが分かった.(瀧ノ上)。 インターフェース実装:インターフェースとして使用しうるナノメカニカルDNAオリガミデバイスに関して、X字型のモデルデバイスを設計・作成して構造と機能の関係を検討した(葛谷)。また、開発した光応答性分子cnvKの光クロスリンク反応の詳細を明らかにするために、速度論的解析やNMR による構造解析を行うとともに、さらに応答速度が大きい新規光応答性人工分子cnvDの開発に成功した(藤本)。リポソームをコンパートメントとする場合についても検討し、脂質二分子膜に局在して物質透過能を示す人工DNAイオンチャネルの構築と,その測定評価系を構築した(野村)。 通信・制御手法:外部から与える磁場により空間移動が可能な回転するリポソーム・マイクロクロラを構築した.また,分子ロボットに搭載する機能として,遺伝子発現とカップリングした遺伝子複製系の構築とバクテリアのシャペロン活性を利用した塩濃度センサの構築を行った. 分子ロボット間協調ルールの設計: DDSへの応用を想定して,がん細胞由来のmiRNA検出するための決定木をDNA計算系として構築し,シミュレーションおよびhas-miR21を用いた実験で有効性を検証した.また,分子ロボット群の確率的行動選択手法として,免疫ネットワークアルゴリズムをDNA計算で定式化した(関山).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンパートメント作製:Y-motifによるDNAゲルカプセルの作製技術(ゲルコア包埋法)を確立し、ゲル膜の透過性の定量的評価に着手した(村田)。界面法による膜状のDNA構造は脆弱で,テンプレート界面からの剥離が困難であったが,ゲル粒子は容易に単離することができることが分かり,油中水滴を利用したDNA構造体の可能性が見えてきた(瀧ノ上)。 インターフェース実装:インターフェースとして使用するDNAオリガミデバイスの機械的な特性の検討についてはほぼ達成した。またDNA構造体とDNAオリガミデバイスとの複合化に関しても、基礎的な知見を得た(葛谷)。光応答性分子で、耐熱性を光制御できるDNAナノ構造体を用いたコンパートメント作製に成功した。また従来の光架橋分子であるcnvKよりも2~8倍架橋速度の大きい光応答性分子cnvDの合成に成功した。さらに、DNA鎖交換反応を光架橋反応により制御できることを見出した(藤本)。DNAオリガミチャネルのリポソーム膜を介した物質透過性の定量的評価のためにチャネル電流測定系を立ち上げた(野村)。 制御通信手法:リポソーム筐体の磁気による回転駆動系について定量的評価を行った(野村)。 分子ロボット間強調ルールの設計:分子ロボットの相互作用のための確率的行動選択モデルとして、免疫ネットワークのDNA計算によるコード化を実現した.具体例としてDDSシステムを想定し,外部にハンドのあるDNA構造体モデルの相互作用シグナルによる凝集制御について検討した(関山).
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今後の研究の推進方策 |
コンパートメント作製:DNAゲルのコンパートメントに、鎖置換を含む簡単な分子計算系を包含させ、コンパートメント外部との入出力を実現する(村田)。本プロジェクトの研究成果である遠心型マイクロゲル生成デバイスを葛谷らのPEG-DNAゲルに応用することで,機能性のあるDNAマイクロゲルカプセルの生成に挑戦する.また,光刺激に応答するセンサ機構に関しても完成させる(瀧ノ上)。 インターフェース実装:DNAオリガミデバイスとDNAコンパートメントの複合化の検討をさらに進めるとともに、DNAの高次構造を架橋点として有する高分子ゲルの構築を行い、DNAのプログラミング性を利用して架橋点の形成・解離を自在にコントロールする手法の確立も行う(葛谷)。既に作成済みのDNAタイル構造だけでなく、DNAオリガミ、DNAゲルによるコンパートメント作製に向け光架橋分子を提供する。特に光架橋分子をY+1モチーフによるDNAゲルに対して光応答能を有するcnvKを組み込ませることで、その安定構造の再現性、ならびに光制御を検討する(藤本)。 制御通信手法:開発したリポソーム回転駆動系をDNAゲルを用いたモデル筐体に移植し,計算可能性をもつモデルを構築する.膜上の人工チャネルを介した物質輸送系を,平面膜からリポソーム膜へと拡張し,内外の物質交換系の評価を行う(野村)。 分子ロボット間強調ルールの設計:現在設計しているDNA構造体が,がん細胞由来のmiRNAを検出し,相互作用シグナルを増幅することを確認する.そして,相互作用シグナルにより,構造体のハンドの結合特性性が活性化し,多数のDNA構造体による凝集体が形成できることを実験的に検証する.このような特定シグナルによるDNA構造体の学習機構を設計し,群れの挙動の自己組織化をプログラマブルな形で実装することを目指す.
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