研究分担者 |
細田 耕 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (10252610)
長井 志江 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特任准教授 (30571632)
荻野 正樹 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (00397639)
杉原 知道 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70422409)
成岡 健一 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 特任研究院 (30588356)
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研究概要 |
ロボットプラットフォームの開発:マッキベン型空気圧人工筋とスチールワイヤを利用した筋腱構造の見直しによって,広い関節可動域を有する筋骨格赤ちゃんロボット身体を設計,試作した.また,幼児型アンドロイドAffettoの開発では,動作実験を終え,対人相互作用実験の計画検討に入った. ミラーニューロンシステム(MNS)の創発における視覚発達スケジュールの役割:発達初期の視覚の未熟さがトリガーとなる前年度モデルで,視覚発達の時間スケジュールの役割を調べ,視覚の自己組織化状態に応じた適応的な発達の進展が,非適応的な(定型の)スケジュールに比べ,より高速かつ頑健に自他の対応関係を獲得できることを示した. 計算理論基盤構築:リカレントネットワークの一種であるエコステーとネットワークを用いて,カオスの淵における情報処理の構造を明らかにし,身体と環境の相互作用における計算論的基盤として位置づけた.また,階層ネットワークによるITモデルの構築,Slow Feature Analysisによる強化学習のための身体表象獲得実験も実施した. 共同注意関連:相手の内部状態の変化に対処する共同注意発達の計算モデルを構築し,シミュレーションにより検証した.また,音声模倣と語彙獲得の共発達のための主観的整合機構を提案し,二つの能力の発達を,聴覚,視覚,調音運動の3つの表象間マッピングとそれぞれの表象内カテゴリ化の同時学習過程としてモデル化した.コンピュータシミュレーションによる検証をほぼ終えた. 以上はに加え,未発表ではあるが,移動エントロピーを用いた乳幼児-養育者インタラクションの定量的解析,環境への効果を利用した階層的な動作シンボルの獲得,乳幼児のリズム運動の観察と解析などの研究を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,身体バブリングから社会性獲得にいたる発達過程をロボットの設計・作動や赤ちゃんの行動計測を通じた構成的手法である認知発達ロボティクス(申請者らが提唱・推進)を用いて明らかにすることを目的とし,昨年度は,環境との相互作用による自身に身体運動創発,初期ミラーニューロンシステム発達モデル,リザバーコンピューティングによる理論的基盤構築,Affettoなどのロボットプラットフォームの開発などが順調に進んだため.
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今後の研究の推進方策 |
[1]神経振動子ネットワークと身体構造の結合による環境との相互作用の結果として,多様な行動生成可能なネットワークの構造を推定し,シミュレーションや実ロボットへの実装を通じて,ネットワークの環境との同調構造(生態学的自己)を明らかにする. [2]ミラーニューロンシステムの初期発達モデルの不備を補足すべく,ゴール指向行動を想定したモデルへの拡張を試みる.多種感覚運動などへの拡張を目指して,基盤となる計算モデルを見直し,ロボットを使った実験を通じて,対人的自己の構造を明らかにする. [3]実際の親子間相互作用において,互いに与える影響の因果関係の数理的解析を通じた相互作用発達モデルを構築し,別データへの適用や検証のためのロボット実験を通じて,モデルを精緻化する.ロボットの表出可能な表情を制御することによる情動的なコミュニケーションを再現し,養育者側の行動を解析する.この過程の解析により,生態学的自己と対人的自己の関係,さらには発達の構造などが明らかになると期待される. [4]上記に過程に内在する計算モデルとして,再帰型ニューラルネットワークを想定し,カオティックな挙動近辺における各種パフォーマンスを計測し,理論的なモデル基盤を構築する. [5]写実型赤ちゃんロボットして開発してきたAffettoを上記の実験に利用可能なプラットフォームとして改良する.特に,センサー系,アクチュエータ系を頑強にし,種々の実験に耐えうるように設計・製作する.また,皮膚の柔軟性を駆使した表情表出手法も改良し,各種情動実験に利用する.
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