研究課題/領域番号 |
22220005
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研究機関 | 財団法人 大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
中西 重忠 財団法人 大阪バイオサイエンス研究所, 所長 (20089105)
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研究分担者 |
船曳 和雄 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, システムズ生物学部門, 研究副部長 (00301234)
岡澤 慎 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, システムズ生物学部門, 研究員 (40414130)
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キーワード | 小脳 / 運動記憶 / 神経回路 / 神経成熟 / 細胞内シグナル / マスター転写因子 / 運動制御 / 蛋白燐酸化 |
研究概要 |
本研究の目的は、脳情報が神経回路網においてどのように処理、統合されるのかまた発達期の活動依存的な神経回路の成熟化がどのような機構で制御されているかを明らかにすることである。我々は特定の神経回路の伝達を可逆的、特異的に遮断する可逆的神経伝達阻止法(RNB法)を開発し、本方法によって小脳顆粒細胞からプルキンエ細胞への伝達を遮断できるモデルマウスを作製する事に成功した。この結果、小脳記憶の視運動性反射記憶(OKR記憶)の発現にはプルキンエ細胞が、一方記憶の獲得と維持には脳幹前庭核が関わり、記憶の各素過程が一連の脳部位で制御されていることを明らかにした。 さらに運動制御及び報酬記憶と忌避記憶を制御する大脳基底核の解析にRNB法を適用し、報酬記憶は基底核の直接路のD1ドーパミン受容体が、一方忌避記憶は間接路のD2受容体が制御するという記憶の伝達制御に関して全く新しい機構を明らかにした。 一方小脳顆粒細胞の成熟化に関わる成熟遺伝子はグルタミン酸受容体、Na^+チャンネル,Ca^<2+>チャンネル、細胞内Ca^<2+>シグナル系の一連の活動依存的な細胞内シグナル系の活性化と細胞外シグナル系のBDNFによって誘導されるという新事実を明らかにした。さらにこの成熟遺伝子の誘導にはEtv1転写制御因子がマスター制御因子として作用しさらにBDNF-Erk系を介したEtv1の燐酸化が成熟遺伝子の誘導に必須であるという神経細胞の成熟化の全く新しい分子メカニズムを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的である神経回路網の制御と形成機構に関して独自の解析方法を確立し(RNB法)また形成機構を制御するマスター制御因子を同定することに成功し、それぞれの機構の理解を大きく進展させた。これらの成果は一線の国際誌に発表し、また現在発表準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
神経回路の制御においてはin vivo顕微内視鏡、生体工学等の種々の手法を用いて小脳運動記憶に関わるプルキンエ細胞と脳幹前庭核の可塑性の機構を明らかにし、さらに小脳運動記憶がOKR反射運動の正確さにいかなる役割を果たしているかを明らかにする。神経回路形成機構に関してはEtv1が未成熟遺伝子の発現抑制を制御していることも明らかにしており、成熟遺伝子の誘導と未成熟遺伝子の抑制の違いの分子機構とEtv1を制御する細胞内Ca^<2+>シグナル系の詳細な分子機構を明らかにする。
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