研究課題/領域番号 |
22220006
|
研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
伊佐 正 生理学研究所, 発達生理学研究系, 教授 (20212805)
|
研究分担者 |
PHONGPHANPHANEE Penphimon 生理学研究所, 発達生理学研究系, 特任助教 (30608782)
加藤 利佳子 生理学研究所, 発達生理学研究系, 研究員 (20425424)
|
キーワード | サリエンシー / 上丘 / 視覚 / 盲視 / 視床枕 / 頭頂連合野 |
研究概要 |
片側一次視覚野を損傷したサルにおいて視覚誘導性サッケード課題の遂行能力を調べたところ、上丘浅層をムシモルの局所注入によって機能阻害したところ、健常側への注入ではサッケードは潜時が若干遅延した程度だが、障害側への注入ではサッケードは顕著に阻害されたことから上丘浅層がサッケードを誘発するための重要な中継点であることが明らかになった。さらに上丘の次の中継点と考えられう視床枕から単一細胞記録を行ったところ、上丘浅層と同様な短潜時の視覚応答を示すニューロンが下部視床枕から見出された。今後、この部位にムシモルを注入してその効果を解析する予定である。また、実験の過程で、盲視野に提示した視覚刺激によって連合学習が成立するという興味深い知見を得た。一方で盲視に関わる脳部位を全脳的に解析するため、陽電子断層撮影装置(PET)を用いて片側一次視覚野損傷サルの脳活動を測定したところ、損傷側で頭頂間溝外側部(LIP)、MT野、前頭連合野の活動がサッケードの回数に比例して亢進していた。これらの結果は、上丘-視床枕-MT野、LIP野-前頭眼野という経路が盲視の際の無意識のうちのサリエントな視覚情報の処理に重要であることを示している。 一方、上丘におけるサリエンシーの検出機構を明らかにするため、麻酔下のマウスの上丘のニューロン集団を2光子レーザー顕微鏡を用いて解析する実験系を立ちあげた。上丘は深部の構造であることから、それを覆っている大脳皮質を一部吸引除去して観察する必要があることから、困難な実験になることが予想されたが、平成23年度は一部大脳皮質を除去し、さらに拍動をうまく抑えることで、上丘の浅層から中間層にかけてのニューロン群を観察することに成功した。特にGAD67-GFPノックインマウスにおいてGABA作動性ニューロンの携帯を観察するごとができた。現在カルシウム指示薬をロードして、光刺激に対する応答を観察するように実験システムに工夫を加えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
盲視モデルサルを用いた単一ニューロン活動記録および、脳機能イメージングの研究は順調に進行した。一方で連合学習に関する大変興味深い成果が得られたことは予想以上の成果だった。マウスでの2光子レーザー顕微鏡に関する研究では機器の導入に時間を要したが、困難が予想された上丘のイメージングが予想以上にうまく行った。安定した神経応答の記録がもうひとつのハードルになるが早晩解決できると確信している。
|
今後の研究の推進方策 |
現状では問題なく研究は進行している。平成24年度中にイメージングに関する論文は発表できると考えている。一方で、大変興味深い、盲視野でのサリエントな刺激による連合学習については最近注目されてきている上丘からドーパミン細胞への投射系が関与していると考えられるので、こちらのテーマの展開の可能性も探ってみたい。 一方、マウス上丘の2光子記録については平成24年度中に麻酔下での光応答に関する仕事はほぼ完成させ、無麻酔での実験に次第に移行させていきたい。
|