研究課題
サリエンシー検出の基盤となる中脳上丘における視覚応答の側方抑制機構を解明するために、麻酔下マウスの上丘から2光子レーザー顕微鏡を用いて細胞集団のカルシウムイメージングを行い、多数のニューロンの視覚応答を記録した。その結果、光刺激サイズを大きくしていくと、反応野の中心部の細胞の活動は変えて弱くなることから周辺抑制が顕著にみられることが明らかになった。さらに視野の異なる部位の2点を同時刺激すると相互に抑制しあうことが明らかになった。さらにGAD67-GFPノックインマウスを用いて興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを区別して活動様式を解析したところ、同様な振る舞いをすることから、側方抑制は側方に長い投射を持つ抑制性ニューロンによって媒介されることがわかった。さらに、このような上丘の局所回路の構造をspiking neuronモデルによって大規模シミュレーションしたとことろ、興奮性、抑制性の側方の相互作用のうち、抑制性伝達のほうがより広いこと、さらに時間経過が遅いという特徴を含めると生理学データがよくシミュレートされることがわかった。このように、膝状体視覚系の入り口にあたる上丘でのサエリエンシー検出機構についてはその概要が明らかになってきた。一方で、上丘を介する無意識の視覚系の機能として、連合学習が起きることが昨年度以来明らかになってきていたが、平成25年度、連合学習課題遂行中に中脳のドーパミン細胞から記録を行うと、一次視覚野損傷側においてもドーパミン細胞は100ミリ秒以下の短潜時で手がかり刺激に応答することがわかった。したがって、盲視での強化学習には上丘からドーパミン細胞への直接投射系が関与する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
盲視サルの脳機能イメージングで、上丘ー視床枕ー頭頂連合野系が重要な視覚情報処理機構であることがわかってきた。中脳上丘での局所回路でのサリエンシー検出機構については、マウスでのスライス標本でも解析、in vivo2光子イメージングでの解析およびspiking neuronモデルでのシミュレーションで概要がわかってきた。また、盲視サルのfree viewing中の眼球運動の解析により、一次視覚野がなくともサリエンシー、特に動き、明るさ、色へのサリエンシー検出はできていることがわかった(Curr Biol 2012)。さらに、盲視サルの認知・行動解析により、連合学習の能力とそのありようについて、大きく理解が進んできた。
盲視でのサリエンシー検出機構の概要は明らかになってきたが、まだ「全貌」を語るには、同時に記録・解析しているのが局所であって、それぞれが線としてつながっていないこと、主に上丘の解析は進んだが他がどうなっているのかわからなかった。それに対し、近年開発されてきた全脳型ECoG記録法や、我々が開発したウィルスベクターによる経路選択的遮断方を組み合わせることで新たなステージに飛翔できる見込みがでてきた。しかし、それにはより大規模な研究体制のp構築が必要である。そこで平成26年度から前倒しで新規の基盤研究Sに応募した。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 5件)
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