研究課題
現在までに作製した改良型免疫不全マウスとして、38系統は系統樹立と解析がほぼ終了した。また、現在樹立中および上記系統の複合化による系統28系統については進行中である。この1年間で得られた新しい免疫不全動物として、1.ヒト末梢血由来NK細胞を長期維持できるNOG-hIL-15マウス、2.ヒト好酸球を高率に分化させることができるNOG-hIL-5マウス、3.骨髄由来抑制細胞(MDSC)を腫瘍に浸潤させるNOG-hIL-6マウスなどがある。また、本研究費で樹立したNOG ES細胞を用いて、マウスG-CSF受容体部分にヒトG-CSFを置換したNOG-hG-CSFマウスの作製に成功した。ヒト人工胸腺細胞の作製のためのマウスES細胞の胸腺細胞への分化予備試験は現在まで成功していない。基礎的研究として、ヒト化NOGマウスで分化するB細胞の詳細なる性状解析を行った結果、ヒト化NOGに検出されるB細胞の大部分は未成熟のB細胞のままexhaust B細胞となり、正常なGC reactionによる多様な抗体産生ができない事が明らかとなった。ヒト化マウスの応用として、1.HLA0405型に対応するb-Lactoglobin (BLG) TCRをレトロウイルスで感染させた造血幹細胞をNOG-0405マウスに移入することによって、抗原特異的な液性免疫が惹起できた。2.HIV感染者にみられる免疫細胞の活性化を解析するためにこれまでのヒト化マウスを使って、HIV感染によって制御性T細胞(Treg)がどのように病態に関与するかを解析した。Tregは、生体内できわめて高い増殖活性を有し、HIV補受容体であるCCR5の高発現状態にあり、HIV感染により枯渇することがわかった。3.骨芽細胞にヒトNotch ligandであるJagged1を発現するヒト骨髄環境NOGマウス(NOG-Jagged1)に、ヒト骨髄腫細胞を移植することによりヒト多発性骨髄腫モデルマウスの作製に成功した。
2: おおむね順調に進展している
1)現在までに作製した改良型マウスは複合化を含めて、66系統に及ぶ。そのうち、38系統で系統樹立と解析がほぼ終了した。また、28系統で系統樹立を行いつつ、解析を行っている。本年度もNOG-hIL-5、NOG-hIL-15やNOG-hIL-6マウスなどで興味深いモデルを作製でき、新しいヒト化マウス作製のための改良免疫不全マウスの樹立は順調に推移していると自己評価する。2)個別化医療の一つの柱である各種HLA導入マウスの作製は、既に樹立したHLA class II分子のDRA0405に加え、0901、1501型の遺伝子を導入したNOGマウスを作製している。現在、発現の安定を観察中である。また、Class II分子としてA2およびA24型を導入したNOGマウスの作製を行っており、現在までにA2が完成した。3)NOGマウス由来のES細胞を用いて、マウス遺伝子とヒト遺伝子を置き換える改良型NOGマウスの作製を実施し、現在までにNOG-G-CSF KIマウスの作製に成功した。新しいモデルの作出が期待できる。また、従来時間を必要としたNOGマウス背景のKIマウスを比較的早期にできるため、研究の幅が拡がった。4)一方で、昨年同様に個別化医療のもう一つの柱であるであるヒトiPS細胞からの人工胸腺や造血幹細胞の作出は未だ、十分な結果が得られていない。5)NOGおよび改良NOGマウスを用いて、ヒト多発性骨髄腫モデルマウスなど特徴あるヒト化マウス動物実験系を作出できた。
本年度は最終年度であるため、作製した免疫不全マウスおよびそれを使ったヒト化マウス研究のまとめをホームページ(HP)へ公開する。すなわち、1.本研究で樹立された各種免疫不全マウスのリスト、2.ヒト化マウスの作製法、3.各種免疫不全マウスに対応するヒト化マウスの特性、4.それを利用したヒト疾患モデルについて、欧文、邦文のHPで国内外に広く公開して行く。本研究開始時に設定した計画を継続するともに、本研究課題の将来的展望に立ち、その方向性の形成のための検討を行う。1.改良型NOGマウスを用いたヒト化モデルの解析とその特性検索:系統樹立・解析が終了した系統については、そのデータをまとめ、論文としての公表と、頒布・提供を行っていく。系統作製中のものはできるだけまとめられるように作製終了を目指す。2.完全ヒト型免疫系保有マウスの作製:現在継続中のHLA Class IのA24、HLA Class IIのDRA0901、1501を導入したNOGマウスについては、その完成を目指す。既に確立済みのA2およびDRA0405については、外部への頒布を行っていく。また、将来的な展望に立ち、NOGマウスのリンパ装置の未発達性を改良するための各種遺伝子改変NOGマウスの作製を行う。抗原特異的なTCRを遺伝子導入した造血幹細胞を移入し、特定の抗原に対応するヒト型免疫を呈するヒト化マウスの実験系を確立する。加えて、今後の個別医療と完全ヒト型免疫系保有マウスの作製のために、人工染色体を用いた手法論を検討する。3.NOG ES細胞を用いた遺伝子改変NOGマウスの作製の継続とその解析:昨年度までにNOG ES細胞を使って作製を完了したNOG-G-CSF KIマウスの解析とその応用を行う。EPO、THPについてはその作製を継続する。4.iPS細胞からのヒト人工臓器の作製や造血幹細胞の樹立:昨年度までの検討で、本項目で十分な結果が得られていない。本年度は将来構想を見据え、方法論を再検討する。
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