研究課題
成長因子を固定化することで、細胞の成長や分化のような高次の細胞機能を制御できる新しいバイオマテリアルが生み出すことができることを明らかにしてきた。本研究では、進化分子工学の手法を用いて新しい結合性成長因子を調製し、医用材料としての展開を図る。材料に結合能をもつ成長因子タンパク質の創成にかかわる分子デザインについて検討を行うとともに、3つの方向での研究展開を行った。第一には、無細胞翻訳系を用いるディスプレイ法を用いたペプチド進化分子工学法の確立。第二には、結合性成長因子の創成。第三には結合性成長因子の医療応用である。(1)「非天然アミノ酸を用いるミスアシル化tRNA法の方法とリボソーム・ディスプレイ法の融合による化学拡張進化分子工学法の開発。非天然アミノ酸として環境に応答して蛍光量が変化する蛍光基を導入したtRNAを合成し、これを進化分子工学過程の無細胞翻訳系に添加することにより、蛍光基含有ペプチド・ライブラリーを調製し、その中からカルモヂュリン結合性ペプチドを選別した。選別したペプチドを有機合成し、カルモヂュリンとの相互作用を調べたところ、相互作用によって顕著な蛍光変化が観測されるペプチドが見つかり、詳細な相互作用検討(SPRやNMR)を行った。(2)「天然アミノ酸を用いた進化分子工学による基材結合性成長因子の創成。上皮成長因子(EGF)の下流にランダム配列ライブラリーを結合させたチタンに結合するEGFの選別を行った。得られたEGF誘導体は、結合性を持つことが明らかになり、現在、その生物活性について検討を進めている。(3)「既存の結合性ペプチド配列を成長因子へ移植することで新しいキメラタンパク質の合成を行い、その活性評価を行った。具体的にはアパタイト結合性をもつタンパク質であるスタセリンの活性配列を骨形成タンパク質とペプチド・リガーゼ酵素を用いて結合させた。得られたタンパク質は、アパタイト結合性をもち、骨誘導能もあることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
当初計画した内容に従い、順調に研究を進められてきている。基材結合性タンパク質を、進化分子工学手法で調製する以外にも新しい方法論を導入できてきているとともに、進化分子工学の化学拡張についても新しい展開ができるようになってきている。来年度は(1)評価ができるものと期待している。
進化分子工学の化学拡張については新たな展開が今後可能となると考えられ、それに従いさらに検討を進め、新しい方法論として一般化できるようにする。新しいタンパク質の医療応用に関しても動物実験結果などが、これから得られる予定になっており、課題名にある「医学応用」についても展開が期待できる。
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