研究課題
がん細胞の悪性形質を制御するNordal pointに位置するMT1-MMPの解析を行った、がん細胞が細胞外基質を浸潤する際に、浸潤突起と呼ばれる細胞の構造体を形成することが知られている。浸潤突起には、細胞内構造体としてアクチンおよびアクチン重合を制御する因子があり、細胞外には接着分子やプロテアーゼを集結させる。浸潤の際に、細胞外基質中のコラーゲンを分解できるMT1-MMPは浸潤突起においても特に重要である。従って、浸潤突起形成とMT1-MMPの局在制御の関係を明らかにすることは重要である。今年度は、MT1-MMPを蛍光標識した分子を浸潤突起を形成するがん細胞株に発現させで、細胞表面上の突起形成部位でのMT1-MMPの挙動を観察し、数理モデルを構築することにより、制御メカニズムの存在を推定した。レーザー光による蛍光の消光とそれに続く回復の過程の観察により、MT1-MMPの浸潤突起への集積は膜表面上の分子の側方拡散の寄与はほとんどなく、もっぱら小胞輸送によって送られることが判明した。また、小胞輸送の阻害と細胞外基質分解の解析に基づいた数理モデルにより、細胞内からのMT1-MMPの繰り返し輸送によって浸潤突起集部位の細胞外基質分解が効果的に進むことが明らかとなった。MT1-MMPのヒンジ領域にはO-glycosylation部位が複数存在し、酵素活性の維持に重要と言われている。しかし、糖鎖修飾を受けている状態のペプチド鎖を感度よく直接検出する方法はなかった為に、直接の証明はなかった。今回、島津製作所との共同研究により、マトリックス上で親水性のペプチドを濃縮する技術を用いることにより、糖鎖修飾を受けているペプチド鎖を直接検出することにより、修飾部位の同定と修飾している糖鎖のheterogeneietyの存在を明らかにすることができた。
2: おおむね順調に進展している
MT1-MMPの細胞上での早い動態を明らかにするには、生化学的なアプローチでは限界がある。そこで、新しい試みとして、細胞表面外に移行したMT1-MMPをpHの変化に依存して蛍光発色させるイメージング技術を取り入れて可視化した。細胞表面のMT1-MMPに由来する蛍光を一旦消光させて、その後の回復を観察することにより、細胞表面の特定部位への移行のスピードを計測した。その変化を数理モデルで解析する為に、数学グループとの恊働研究を開始している。本年度は、特にこのような異分野の研究交流で成果を上げることができた。島津製作所の質量分析系作成チームとの共同研究も異分野融合の一環であり、全タンパク質を一挙に測定にかけることにより、糖鎖修飾を受けているペプチドを高感度に研究す鶴という快挙をあげることができた。
最後の1年を残すことになったが、特に研究計画への変更はない。MT1-MMPによる基質分解の解析を特にEphA2に着目して継続するとともに、細胞内ドメインを介した細胞代謝活性の制御機構についての解析を進める。
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