研究課題
1.NEEM深層コア試料の一部についてイオンの再測定を行なった。最終間氷期において陸域生物起源のイオンは濃度が増加していた。しかし、一時的に濃度が低下する時期があり、最終間氷期にアメリカ大陸において、寒冷期があった可能性を示唆する。2.平成25年11月に国立極地研究所に納入された希ガス分析用の質量分析計の立ち上げと精度確認、分析手法の開発を実施した。配分されたNEEMコアの完新世の試料につき、窒素および酸素、アルゴンの同位体比および濃度比を分析し、2009年掘削のコアについて気体ロスに関する知見を得た。スクリップス海洋研究所に保管してあった希ガス分析用コア試料のうち、2010年掘削の試料を日本に輸送した。3.NEEMフィルンを用いたマイクロ波誘電率の計測結果をとりまとめ論文化し、投稿し、現在査読中である。また、24年度に蓄積した物理解析のデータを分析し、堆積環境と、その結果としてできあがるフィルンの構造を調査した。この結果、固体微粒子が変形に及ぼす役割に関する考察も上記投稿論文に含めた。4.蛍光顕微鏡を用いてNEEMコア中の微生物数を計測した。これまで分析の行われていなかった深度602mから1483m、2094m-2176mを対象に蛍光染色試薬で染色された微生物を計測した。深度1300m以上では、それ以深に比べて微生物濃度が均一に低い事が示さた。この深度では鉱物粒子も顕著に濃度が低い事から、アイスコア中に含まれる微生物の多くは鉱物粒子と同様に飛来してきている事が示された。一方で、濃度の高い時期でも微生物と鉱物粒子や化学成分の高濃度層は完全には一致しない事から、おおまかには鉱物粒子等の他の物質と共に輸送されてくるものの、微生物の氷床上への飛来ー堆積の詳細なプロセスは鉱物粒子とは異なる事が示された。
2: おおむね順調に進展している
以下の通り、概ね順調に進展している。1.イオン分析はほぼ終了しており、現在データの国際比較による最終データセットの作成中である。2.国立極地研究所における気体分析は順調に進んでおり、新しい質量分析計の立ち上げと手法開発も順調である。今後の分析によって氷床表面状態や平均海水温、年代等に関する知見が得られる見込みである。3.微生物解析については、予定されていた、これまで分析が行われていなかった深度602mから1483mのサンプルの分析をおこない、氷期間氷期サイクルにおける微生物濃度の変化を計測する事ができた。4.物理解析については、当初の目的をほぼすべて達成し、論文投稿・査読に至っている。
1.今後は得られたイオンのデータを用いて論文を執筆する。2.新しい質量分析計の立ち上げと分析手法の開発を終了し、NEEMコアの希ガスや窒素の同位体と濃度比を分析する。また、昨年度に続き、窒素、酸素、アルゴンの同位体比や濃度比の分析を実施する。最終間氷期の試料のメタン濃度を分析し、表面融解や年代決定に関する知見を得る。取得した気体分析データをとりまとめて論文化する。3.前年度までに得られた微生物量の深度分布から、微生物濃度が高かった部位を中心に高時間分解能で分析を行い、その他の分析結果(鉱物粒子濃度、イオン濃度、微生物遺伝子の多様性)との詳細な比較をする。また、メタンガス濃度のピーク周辺で、微生物濃度の計測を行い、メタン生成に寄与している可能性のある微生物の検出を行う。4.フィルンの圧密と変形の実態をさらに明らかにするために結晶主軸方位分布、気泡・空隙や氷の形状の計測を行なう。南極のフィルンを用いた同様の計測との比較を実施し、グリーンランドと南極のそれぞれでのフィルンの構造的な特徴を明らかにする。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 4件) 備考 (2件)
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