研究課題
内泌撹乱化学物質・ビスフェノールA (BPA)の低用量作用が懸念されるなか、胎児(仔)期の脳神経成長に影響する可能性が判明した。本研究では、まず、この分子機構を解明することを目的とする。一方、BPAの代替としてビスフェノールAFなどを原料とする新プラスチックが続々と開発され、生産量が急増している。こうしたなか、これらの内分泌撹乱作用が心配されている。我々は、例えば、ビスフェノールAFがエストロゲン受容体α型にアゴルニスト、β型アンタゴニストとして強力に働くことを発見した。そこで、本研究ではこうした新世代ビスフェノールの核内受容体を介したシグナル毒性、内分泌撹乱作用の分子機構の解明にも取組む。本年度、まず、食餌によりBPA暴露したマウスの最終日齢の胎仔脳について、ERRγの転写制御を受けている27種のヒト核内受容体mRNAの遺伝子解析を実施した。これによりBPA食餌が有意な変異を誘導する核内受容体数種が同定された。また、約半数が何らかの影響を受けていることが明らかとなった。これらの変異の分子レベルでの反応機構を考察するとともに、BPAの受容体ERRγ結合がもたらす受容体側の機構のみならず、BPA自体への構造的効果を考慮すべき新規な視点が見出された。ビスフェノールAFのERαでのアゴニスト、およびERβでのアンタゴニストの活性相違が大きな研究課題となっているが、化学合成と試験の結果、このAFが持つトリフルオロメチル基2個は1個でも良いこと、他のハロゲン(塩素、臭素)でも同様な受容体応答を誘起することが新たに判明した。BPAがショウジョウバエに誘起する多動性障害では新たに朝方の活動ピークのみが消失することが判明した。しかも、朝方に活動リズムを伝達する時計遺伝子の突然変異が起こっていることが明らかになった。そして、これが多動性常態化の原因となっていることが初めて分かった。
1: 当初の計画以上に進展している
昨年度にERRγについてChIP-Seq解析に成功し、関連する遺伝子を数千種類が同定されたことにより、計画は加速度的に進展しつつある。また、ショウジョウバエ脳とマウス胎仔脳での解析を並行して実施しているため、論点を補完し合いながら遂行でき、相乗的な効果をもたらしつつある。
ショウジョウバエでのビスフェノールA食餌、行動活動リズム解析から「多動性症状」への関与が明確となり、しかも、これらに関与する時計遺伝子の同定にも成功した。このため、同様な解析をほ乳類・マウスでも実施すべく、マウスの行動リズムについて測定装置を導入した。したがって、今後は、このマウスの行動リズム解析から、活動二峰性への影響、遺伝子発現の変動、時計遺伝子の突然変異などに着目した研究を鋭意に展開したい。
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